崩れるのは 一瞬だった
昨日までの暮らしが 一変した
男は ホテルマンだった
コロナ禍で 道内への観光客は一斉にいなくなった
入国規制で インバウンド(訪日客)の需要が激減した
まざまざと 中国人や韓国人の観光客で潤っていた現実を突きつけられた
需要回復には 1~2年かかるという
観光事業者は 先行きの不透明さを切実に訴える
3月末 ホテルは営業を一時クローズした
男は レイオフされた
妻と二人の子との ごくごくありふれた暮らしは
次第に行き詰まっていった
住宅ローン 去年購入した新車のローン
そして税金が 追い打ちをかけ
雇用調整助成金では足りなかった
奈落に落とされた気分だった
世界最大級とぶち上げている 国の緩慢な支援
四人分の40万円も まだ手元には届いてはいなかった
男には 焼け石に水のように思えた
男は 歯ぎしりするしかなかった
男は 切羽詰まっていた
知人に社協を紹介された
生活福祉資金の相談をした
社協すら知らなかった男が
福祉の世話になろうとは 想像すらもつかなかった
溺れる者は藁をもつかむおもいで 申請をした
6月1日 道の緊急事態宣言が解除されたが
観光客は まだまだ戻ってはきていない
男は レイオフの解除を いまは辛抱強く待つしかなかった
資金繰りに頭を悩ます日々が 当面続く
〔2020年6月6日書き下ろし。生活福祉資金(緊急小口資金)の相談と申請が激増した。派遣や個人事業者だけではなく、ごく普通の暮らしを営んでいた人たちからの相談も今回の特徴だという。災害時のように、社協の相談対応は続く〕