30代だった
ある小学校で 教員をしていた
働くことが幸せであったか
自己成長は 半端なかった
リフレッシュは 子どもらとの何気ない戯れだった
チームワークは 同僚とはほとんど不要だった
役割認識は 常に果たそうと努力していた
他者承認は 同僚には求めることはなかった
他者貢献は 常に子どもたちがいた
自己裁量は 多くは自己判断し その責任を自らに強いた
では 不幸せだったのか
自己抑圧は ほとんどしなかった
理不尽なことは 中学生の我が子にも及んだ
不快空間は 組合員の集う職員室だった
オーバーワークは 日常茶飯で悔いはなに一つなかった
協働不全は きっと非組の自分だけだった
疎外感は 負けないぞという闘志を生み出す源となった
評価不満は まったくないと断言しよう
孤立無援の職場の中で
弱虫だったから 意地を通した
臆病だったから 虚勢を張った
仕事では 失敗せぬよう心した
授業研究には 自他共に厳しく挑んだ
子どもには いつも助けられ救われた
宴会で 酒は飲まず 無礼講を静観した
同調圧力に屈しない 嫌みなやつだったにちがいない
組織の枠にはまらぬ 異分子だったにちがいない
やることなすこと身勝手で 扱いにくかったにちがいない
異端児然とした試みに 反発と羨望を抱いたにちがいない
幸せだったか?
少しでも〈共育〉という実践ができたなら
幸せだったと
子どもと学んだ 福祉とボランティアの世界に生きたから
幸せだったと
それを 共感をもって支える外の仲間がいたから
幸せだったと
〔2020年7月19日書き下ろし。幸せの因子がマイナスでも不幸せの因子を跳ね返すことで、幸せを強く感じていた自分を見つけた。学校という閉鎖社会はいまも続く。その中でこうして生きてこられた幸せを確かめた〕
付記
「幸せな職場」とは?最新研究が示す“七つの要因”
働くことで感じる「幸せ・不幸せ」はどんな要因がもたらしているのか――。慶応大学の前野隆司教授(経営幸福学)の研究室とシンクタンクのパーソル総合研究所の共同プロジェクトが大規模調査からその要因を導き出した。それをもとに働く幸福度を測定できるツールも開発しており、日本の「幸せな職場」作りに役立てられるという。
共同プロジェクトは昨年7月から、予備を含め3回の調査(本調査は有効回答数約5000人)を行い、働く幸せや不幸せをもたらすそれぞれ七つの要因を特定した。
幸せと感じる因子は、自己成長(新たな学びがある)▽リフレッシュ(ほっと一息つく)▽チームワーク(仲間とともに歩む)▽役割認識(自分のこととして仕事ができる)▽他者承認(人に見てもらえる)▽他者貢献(誰かのためになる)▽自己裁量(マイペースでできる)――の七つ。
一方、不幸せの因子は、自己抑圧(自分なんてという感情)▽理不尽(ハラスメントを受ける)▽不快空間(不快な職場環境)▽オーバーワーク(過重労働でヘトヘト)▽協働不全(職場がバラバラ)▽疎外感(ひとりぼっち)▽評価不満(仕事が報われない)――の七つとわかった。(毎日新聞経済プレミア編集部2020年7月19日)