トマトを食べた

6月5日
ゴーヤーとトマトの苗を買いに
園芸センターに行った
時すでに遅し
腰を痛めて 外に出られなかった
付けがここに回った

売れ残りのわずかな苗たちが
一角に集められ
半額の値札を付けて
処分されるのを待つ
その姿は痛々しい
中から 1本だけ選んだ
それしか めぼしい苗はなかった

庭の片隅に移植し 成長を楽しむ
脇芽を摘まぬと いつもの如く
自由奔放に 枝を伸ばす
その我が物顔の ふるまいがいい
花が咲き 下の方から実を結び
大きくなって 熟すのを待つ
毎日いまかいまかと 焦がれるのがいい

2ヶ月かけて ようやく1個
食べるに値するまでに 成長した
無農薬の赤いトマトを さっと水で洗って
工事中の口の中に 放り込む
甘酸っぱい果汁が 口に広がるのがいい
歯の腫れの痛みを忘れた
ひと坪農民の 収穫の喜び

百円の苗が 観察と世話という
小さな役目を 毎日与えてくれる
大それたことなど 出来るわけはない
隣には枝豆が 小さなサヤをたくさんつけて
中身の子豆を 育てている
夏の終わりには 間に合うだろう
ビールのつまみにと 希望を託すいまがいい
ひと坪農民の ささやかな歓び

〔2020年8月9日書き下ろし。いまは5種類の紫陽花が花の盛り。3本はいただいた切り花を刺したら根がついた。草花は、なにかほっとかれんところがいい〕