父子で TVニュースを見ていた。
「総裁選挙ってなあに?」
「国の偉い人を決める選挙」
「国の偉い人は、総理大臣でしょ」
「そうだよ」
「でも、なぜ総裁を決めるのにこんなに騒いでいるの?」
「日本は、米国のように大統領を選挙で決めるわけじゃないんだ」
「じゃあ、どう決めるの?」
「自民党というグループの中で、総裁という人を選挙で決めるんだよ。その総裁になった人が、今度は国会で選挙して総理大臣に決まるってことなんだ」
「総理大臣に、なぜ決まるの?」
「国会議員で自民党の人の数が多いから、選挙すれば絶対に勝てるんだよ」
「それじゃ、総裁になれば総理大臣になっちゃうんだね」
「それは自民党の国会議員の数が多くなきゃいけないから、今まで2人、なれなかった総裁もいたんだよ」
「それじゃ、国会議員の数が多い政党のほうが絶対強いんだ。でも総理大臣という偉い人をそんな簡単なことで決めるって、なんか変?」
「どうしてそう思うの?」
「だって、大人のみんなが選挙で議員として選んだだけで、総理大臣を選んだわけじゃないでしょ。勝手にそのグループの中から選ぶのって、みんなの気持ちはなんにもこもっていないよね」
「そうだね。でも日本のルールはそうなっているから仕方ない。でもその総裁を決めるために議員だけでじゃいけないって、全国にいる党員という人たちも選挙に参加して決めるんだよ、ほんとは」
「じゃいまのはほんとじゃないの?」
「全国の党員の中の全部じゃないけど、参加はするけど国会議員の数が多いから、議員の人をどれだけ味方にするかで決まってしまうような選挙にしたんだね」
「だからこうして、毎日ニュースで誰がどうしたって言ってるんだ。でも、派閥がどったらこったらってって言ってるよ」
「自民党というグループといってもいろんな考えを持つ人がいるからね。クラスの中で仲良しグループってあるじゃん。自民党にもそんな仲良しグループがいくつもあるんだよ」
「そっか! さっきから見てて麻生派とか二階派とか細田派とかって言ってるのはそのことなんだ」
「その通り。なんだか、知らないうちにそんなに詳しくなって、頼もしいね」
「たださっきから選挙しますって言ってるけど、もう決まったてんじゃん」
「えっ、どうして?」
いまニュース速報で菅官房長官が立候補を正式に表明すると流れる(2日17時23分)
「立候補するんだね。でも別に選挙しなくても、選挙する前から二階派や麻生派や細田派のグループの人たちが、管さんを応援するから勝つのは決まってるでしょ。それなのに、なんで今さら選挙するの。してもしなくても変わらないのに」
「でも選挙してみんなで決めたと言うことが、大事なんだよ」
「だけど、岸田さんも石破さんも負けると分かって立候補する意味ってわかんない」
「それが日本のやり方だから、いまさら変えられないのさ」
「総理大臣を決めるのに、選挙ごっこして決めましたって、大人げないよね。子どもにもわかるような間の抜けたことしていて、大の大人が恥ずかしくないのかな」
「鋭い! その通りだね」
「こんな決め方で、選挙しましたって言い訳するのって、なんだかうそっぽい」
「だから、政治家を信用しなくなるんだ。困ったもんだね」
「もっとおかしいと思うのはね」
「なんだい?」
「そう思い込んでいるパパたち」
「おっと、痛い所を突かれた。その通りです」
「もっとおかしいのはね、仲良しグループでもみんな考え方って違うでしょ。一人ひとり自分の考え方があるから政治家になったんでしょ。それなのに、グループの偉い人の言うこと聞いてるだけで、いいの? 選挙って自分がこの人って投票するはずなのに。おかしいって気がついても、直すことが出来ない人が、どうして日本の国やひとのことを考えられるの。子どもたちのこと考えられるの。みんな偉い人の言うこと聞くんだよ、そうすれば悪いようにはしないよって言われているような気がする。それでいいの?」
「うんん、参った!」
「パパだって、いつもどんな小さな事でも自分で考えて自分で決めなさいって言うでしょう。大きな事は自分で決めなくてもいいってこと? 人任せにしてもいいってこと?」
「そうじやない。大きい小さいにかかわらず、自分で決めて動くことが,パパは一番大切だと思うよ。そう言ってるパパもそうしないで、政治は人任せにしてきたかもしれない。いいことがあればほめるし、悪けりゃくさすようなことをしているだけで、真剣にこれからのことを考えていなかった。自分の子さえよければいいって、君たち子どものこともちゃんと考えてこなかったと、大いに反省しなきゃいけないね」
「選挙ごっこで大事な人を決めて、ほんとに大丈夫って子どもでも心配になるよね」
「そもそもそんな人たちを選んだまま、好き勝手をさせている大人たちがたくさんいることが、一番問題だね。ダメなことはダメって声を出していかないと、みんなが仕合わせにはならないね」
「パパ、仕合わせってなあに?」
「えっっ!」
〔2020年9月2日書き下ろし。政治の生きた教材を学校では政治教育とみなし使用不可。だから世の親が民主主義と政治力を鍛えよう。秋田生まれの同世代の管さんが総裁になる。JapanDreamの幕が上がる〕