おとなの話に口を挟まない

昭和30年代
8畳と4畳半の2間の 四軒長屋の社宅で
家族6人で暮らした 子ども時代
来客が来ても 子どもらの逃げる部屋はない
仕方なく おとなの話を聞く
本心は 大人の話に興味津々の子どもたち
おとなしくしていたが つい口を挟む
母親がつかさず 叱責する
「大人の話に口を出すんじゃない」
しばらく黙っているが また挟む
母親が苦笑しながら
「ほんとに言うことをきかない子で」
客は取り繕うように
「うちの子もそうよ」

おとなの子どもを見た
米大統領選挙の候補者のテレビ討論会
制限時間が設定された討論会
相手の言った先から口を挟む
ルール無視のやりたい放題 言いたい放題 
司会者がたしなめても 言うことをきかぬ
米国の恥をさらした トランプ大統領
相手の話が終わるまで 口を挟まない
この程度のたしなみは 子どもにもできる
おとなの子どもは この歳では変わり様はないか
討論終了後 CNNテレビの司会者は
「史上最もカオスな討論会でした」と感想を述べた
口汚い論争を仕掛けて 相手のミスを誘う
カオスは トランプその人にあった

世界で注目された ののしりあった討論会
この程度の大統領候補を選んだ 国民への報いか
民主主義の根幹をも揺らがす 
誹謗中傷するだけの恥を さらしただけだった
老人の吠える姿の醜さを 世界中に発信して
なおも選ばれるとしたら 世界秩序の崩壊でしかない

米国の憂鬱は まだまだ続く  
それは コロナ禍で疲弊している
世界の憂鬱でもある
そして 確実に
敗北者は 米国民となる

〔2020年9月30日書き下ろし。アメリカ大統領選挙・討論会に、つい口を挟む〕