持ちつ持たれつ

ひとりで踏ん張ったって
いずれ息切れしてぶっ倒れる
我慢は美徳なんて 信じちゃいけない
自立できるひとなんて だれひとりとしていない
誰かの肩に 寄っかかることもあるだろう
だから 持ちつ持たれつって当たり前のことかな

生まれてこの方 誰ひとりとして 
一人ぼっちで生きてきたひとなんぞ いるわけない
暮らすってのは 他人様のお世話を前提に成り立っている
余計なお世話をするなってのたまうひとも
余計じゃないお世話は 受けるんだろう
必要な時に必要な手助けがあれば 少し暮らしが楽になる
その丁度いい間を取った関係で いたいというのが小さな欲
これぐらいは お互いに痛くもかゆくもない
それが 持ちつ持たれつの居心地いい関係づくりかな

大事なのはさ 俺もあんたもここで暮らし続けるってこと
いつまでも若くはないし 病気もする
夫婦だって 家族だって 友だちだって 赤の他人だって
気にかかるひとが 元気で不安なく暮らしているなら安心だけど
「助けて!」って突然声をあげたら 駆けつけるのが人情だろう
そこだよ そこなんだ!
「助けて!」って声を出しても 誰かがそばにいなけりゃ助けられない
それこそ 持ちつ持たれつの本意じゃないかな

自分勝手で口うるさく罵(ののし)るひとも いることはいる
誰も近づけないから 余計に意固地になって生きている
頑固でなかなか言うことも聞いてくれないひとも いることはいる
誰も面倒に巻き込まれたくなくて 遠ざけられている
歳を重ねるほどに面倒くさくなるひとも いることはいる
確実に身体も気も弱くなるから 強がるのもよくわかる
きっと持ちつ持たれつのいい関係をつくれなかったんだ

そんなひとをほっとけなくて 孤立させちゃなんないって 
世話を焼く奇特なひとは いつの世でもいる
人間の性根を 太く育てながら生きてきたひとたち
でも 一方的にお世話を焼くわけじゃない
そこに 人としての品性が磨かれてゆく道がある
それが 持ちつ持たれつから得られる仁の徳じゃないかな

※持ちつ持たれつ:互いに依存し合い助け合うことによって、両者とも存続するさま。

〔2020年10月17日書き下ろし。持ちつ持たれつの関係づくりは互酬性とも重なってくる。徳が磨かれず損得勘定する人が目につくご時世の中に、民生委員児童委員は動く〕