男女ペアの訪問活動

はじまりは
平成12年 介護保険制度のスタートだった
地域に暮らす高齢者への 目配りが欠かせなくなった
老化や病気による身体機能の衰えで 暮らしに支障をきたしていた
ボケ(認知症)も 社会問題になっていた
在宅介護できない高齢者は 社会的入院を余儀なくされた
老人福祉施設も 措置から契約への大転換期(ビッグバーン)が起こった
サービスを受ける家の前に 介護の車が駐車すると
親の面倒も見られないのかと 陰口を叩かれた
世間に肩身を狭くして サービスを受ける時代でもあった

それでも 
在宅で暮らす高齢者が 介護保険サービスを受けることで
地域や自宅で 少しでも長く暮らしていけるように
介護で苦労する家族の負担が 少しでも軽くなるように
サービスを受けることに 負い目を感じることがないように
行政と連携して 民生委員も担当地域を精力的に回った

はたと
回って見て 気づいた
独居の女性宅に 男性委員が訪問することのためらい
相手との相性で 受け入れてもらえないわだかまり
孤独死に立ち会い 誰にも相談できなかった無念さ

だから
困っている人の 本当の困りごとを聞き取れるよう
男と女のペアを組んだ
ケースバイケースで 対応した
携帯番号は 男の方を伝えた
更新の度に 地域の男女の配置が崩れぬよう人選を求めた

いつか
民生委員の成り手不足が 起こっていた
行政OBも 担ってくれるようになった
ただ男女のペアを維持するのは 難しくなっていた
それでもペアの活動は 有効だった
地区を担当する委員を ひとりぼっちにさせてはならない
互いに支え合う関係は いまも新任に引き継がれていく
これが 民児協の活動の底力に 力強く変換されていく

〔2020年10月29日書き下ろし。道北の士別市民児協の20年に及ぶペア制度を取材した。きっかけは丁寧にお話を伺うという基本中の基本のスタンスだった。〕