玄関の鍵を開ける
ただいま
おかえりの声はない
誰も居ない家
外気と同じ寒さを感じる
ただいま
習慣づけられた挨拶
待つ人がいなくても
声に押されて 玄関に入る
靴箱に置かれた消毒液が 日常になる
ストーブをつける
冷えた身体と部屋を暖める
母と妹が戻るまでの留守番
宿題をして ゲームで遊ぶ
ただいま
母の背中で妹の元気な声
おかえり と大きな声で返事する
ただいま きょうもいい子にしてた
母のその一言が 一番嬉しい
お腹減ったっしょ
いますぐ用意するね
お願いね
妹を下ろして コートを脱ぐ
今日も遅かったことを詫びながら
母は3人の無事な1日を喜ぶ
夕餉は出来合いのものだけど 美味しい
「感染リスクを回避できない場合」の仕事しかない
明日もまた リスクに厳しく晒される
決して子どもたちに移してはならない
子どもが健康でいることが いまは一番
明日も無事に帰宅したい
「ただいま」「おかえり」
無事の挨拶が続きますように
子どもの寝顔に 願掛けをする
〔2020年11月20日書き下ろし。道内は今日300人を超えた。コロナ第3波の真っ只中で、リスクを回避できない仕事で頑張る母と留守番の子らとのコロナの闘いは続く〕