カルトの呪縛を解き放す

1・6 米国のカルト集団が暴発し戦慄が走った
「集会に来てくれ、ワイルドになるぞ!」
「愛している。米国を再び偉大に」(トランプ大統領のSNS)
「首都ワシントンに向かう全ての愛国者たちよ、武装せよ」
「我々の全ての敵に通告する。戦争を望んでいるのか?」(呼応するトランプ支持者が集う新興SNSのパーラー)
「共和党員よ、頭を使ってくれ。戦え!」
「弱腰では米国を取り戻せない」(当日のトランプ大統領の演説)
「前進せよ、前進せよ」(議事堂に押しかけたトランプ支持者)
「(暴動は)大統領が扇動した合衆国への反乱行為だ」(シューマー上院院内総務)
「非愛国的で偽善的な羊が盲信的に行動する」(P!nkシンガーソングライター)
「彼は国の恐怖を駆り立てた。これはテロだわ」(レディ・ガガ)
「これは異議申し立てではない。混沌で、ほとんど反乱だ」(バイデン次期大統領)
「これはトランプにトランプ流をさせたことによる当然の結果だ」(ジョン・ケリー元首席補佐官)
「トランプは正気を失っている」(共和党のトランプ大統領側近)

1・6 米国の民主主義が 大統領自らによって恥辱にまみれた
洗脳され扇動された支持者の 過激な者たちが暴徒化した
5人が死亡する流血の惨事を招いた
SNSで流れた動画には
中継の画面を見ていた取り巻きたちが
得意顔で してやったりの笑みすら浮かべ
男の妻は 笑顔で手さえ振っていた

1・6 米国議会が襲撃された 最悪の日として歴史に刻まれた
デマゴーグの男は「不正があった」と 根拠のない陰謀説を力説し煽った
ワイルドな集会になるとの予知を放置し 警備は厳戒体制ではなかった
議事堂のドアは 内側から開けられた
「もし黒人差別のデモ参加者だったら、全く違う扱いを受けていただろう」(バイデン)
「メディアをアメリカ人の敵だと呼んだが、誰が本当の敵か、大統領は熟慮するべきだ」(7日CNNキャスター)
「大統領を今日刑務所送りにするべきだ」(7日MSNBCジョー・スカボロー)
暴動後狂気の男は 非難と弾劾を恐れ 円滑な政権移行を認めた
カルトの権化の男は いまも熱烈な支持者に呼びかける
「私に投票してくれた偉大な愛国者たちは、将来にわたって巨大な声を持つ」(トランプ最後のツイート。Twitter社は8日削除しアカウントを永久に停止する)
「任期満了を待たずに辞任すべき57%、事件後の対応を支持しない68%」(8日ロイター通信などが実施した世論調査)

1・6 米国民を守るためあらゆる手段を講じなければならない日となった
去年の2月6日 トランプの一般教書演説が終わった直後に背後で原稿を破り捨てた 
民主党のナンシー・ペロシ下院議長が動いた
米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長に電話した
錯乱したトランプが 核兵器使用に必要な発射コードにアクセスしたり
軍事行動や核ミサイル発射を強行したりする事態を避けるための予防策を協議した
大統領権限の制限に関する議論が 公になるのは異例中の異例だ
権力にしがみつき 狂気の沙汰を平然と繰り返す男である
TwitterやFacebookで政敵を熾烈に攻撃し フェークを流し続けた男である
カオス集団の指導者として 君臨する男である
自身の恩赦を考え 超法的な人間になりたい男である
自爆的にスイッチを押す可能性を察知した協議に 戦慄が走った
映画のワンシーンが 現実となった

1・6 米国の地に落ちた民主主義の再生と国民の分断を是正する日となった
「トランプ王国の崩壊が遅すぎた」(ジョン・ケリー元首席補佐官)
民主党が トリプルブルー(大統領・上院下院過半数)を取った
だがバイデン次期大統領には 厳しい船出となる
強引な議会運営をすれば 新たな火種を生みかねない
人種や宗教 健康(コロナ感染症対策) 文化の対立や貧困・失業などの経済格差
温暖化や環境問題 食料生産や貿易問題 国際問題など置き土産が山積する
火種は 複雑に絡み合い幾重にも分断され 苦渋し昏迷する国となった
人心に寛容と協調を 国是として動かしてゆくのは至難の業だ
やらねばならない
米国大統領としての威信と国民の誇りを取り戻すために

1・11「反乱の扇動」として弾劾訴追決議案が提出されれば不名誉な日となる
「大統領職にとどまれば安全保障や民主主義、合衆国憲法への脅威であることを証明した」(弾劾決議文の草案)
ねらいは 24年大統領選への再出馬を阻止すること
上院で否決されても 退任した後も弾劾裁判が続く可能性がある
そこで 罷免ではなく「有罪」の判断を議会が示すしかない
弾劾裁判で有罪を突きつけ 公職に就く資格を剝奪する
「トランプにトランプ流にさせた結果」の最後の審判
カルト集団に 男の罪状を一つひとつ明らかにして
カルトの呪縛から解き放すことが 議会の役割ともなった

〔2021年1月9日書き下ろし。オウムの様々な事件の首謀者たち信者を想起する。まさにカルト的な状況が一国を二分していることの戦慄である。理ではなくトランプ信仰である〕

付記
米民主、トランプ氏の弾劾決議案提出へ調整 米報道
【ワシントン=中村亮】米下院民主党がトランプ大統領の弾劾決議案を提出する方向で調整していることが8日、明らかになった。複数の米メディアが報じた。トランプ氏が連邦議会議事堂への乱入を扇動して民主主義を攻撃したと判断し、大統領として不適格だとの見方を強めている。(中略)
ペロシ氏は8日の書簡で「抑止の効かない大統領という緊急事態ほど危険なものはない」と指摘した。同日午前に米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長と電話し、トランプ氏が核兵器使用に必要な発射コードにアクセスしたり、核攻撃を命じたりする事態を避けるための予防策を話し合った。AP通信によると、ミリー氏は予防策を講じていると説明したという。(日経2021年1月9日)

米民主、スピード弾劾探る 「トランプ氏は安保脅かす」
今回は下院が異例の速さで弾劾訴追を決議する可能性がある。民主党が11日にも弾劾決議案を提出する方向で調整し、早ければ週半ばにも本会議で採決する案が浮上している。
(中略)通常は司法委員会での公聴会や決議案の審議を経て本会議で弾劾の採決をするが、民主党のナドラー司法委員長は決議案を本会議に直接提出すべきだと主張。議会占拠をめぐるトランプ氏の言動を容易に確認できるため詳細な調査や審議は不要だと考えているようだ。(中略)
罷免には上院(定数100)で出席議員の3分の2以上の賛成が必要になる。上院勢力が拮抗する現状では共和党から最低17人程度の造反が条件で、ハードルは高い。
20日にトランプ氏が退任した後も弾劾裁判が続く可能性もある。その場合、罷免ではなく「有罪」だとの判断を議会として示すことで、大統領選への再出馬を阻止することが目的になりそうだ。トランプ氏は24年の大統領選出馬を検討中とされる。上院は過半数の賛成で、弾劾裁判で有罪となった人物から公職に就く資格を剝奪できる。(日経2021年1月9日)