正しく怒ろう

心優しい人だった
人を疑うことなど ほとんどなかった
善意あふれる人だった
人の過ちを咎めることなど したことはなかった
信望の厚い人だった
人の悪意をなじることなど 一度もなかった

相手の不誠実な態度と公務怠慢に 憤りを感じながらも
心優しい人は 自責の念にかられた
自分の人格的な未熟さが 事態を招いたのではないか
自分の軽率な言動が 反発を招いたのではないか
相手を責めることなく 自らを叱責した
自己否定の感情が 心を支配してゆく

心優しい人は 自壊寸前だった
自分の立ち位置が だんだん見えなくなった
急速に思考力も判断力も萎えて 不安が心を満たした
負のスパイラルから なかなか抜け出せなかった

心優しい人は 苦しみながらも問題の本質を理解した
相手の人間性とその公務意識に そもそもの問題があった
憤りが沸々と湧いてきたが 怒ったことの経験がなかった
その憤りに どう向き合うのかわからなかった
その憤りを どう処理するのかわからなかった

相手は人の良さを当て込んで 優しさにつけ込む
相手は反撃のないのを見込んで 甘く見てつけ入る
相手はしたたかに立ち回って 責任逃れの詭弁を準備する 

相手に怒りをぶつける
どう怒りをぶつけていいのか 戸惑うばかりだ
相手を責める
どう責めたらいいのか 皆目見当もつかない
相手が改心する
どう改心させるのか 不穏な気持ちが先立った 

私憤ではない 公憤である
私憤としての怒りは 時に自身の人格を傷つける
公憤としての怒りは 正当性が担保されなければ誹謗となる
仲間の支持を取り付け 正しく怒ろう
身勝手を許してはならない
仲間の支持をバックに 正しく怒ろう
公務怠慢を放置してはならない
仲間とともに ブレることなく正しく怒ろう
曖昧な妥協は 根治には決してならない

心優しい人たちの公憤とは
感情論ではなく 不始末への正当な改善要求そのもの
建前論ではなく 本音で迫る人材配置への改革要求そのもの
理想論ではなく 市民参画の道を拓く協働要求そのもの

〔2021年3月19日書き下ろし。人の良さにつけ込む言動が、有能な人材を失望させ市民活動を後退させる。市民は行政への正しい怒り方を身につけたい。要検証〕