老爺心お節介情報/第34号(2022年3月24日)

「老爺心お節介情報」第34号

〇皆さんお変わりなくお過ごしでしょうか。我が家の小坪には、ミツバツツジやシデコブシの花が咲き、春到来を告げています。
〇新型コロナウイルス感染症の「第6波」も減少傾向を見せ始め、少し気分的にも楽になってきました。私自身は2月4日に第3回目のワクチン接種を行いました。それでも地方への出張では気を使い、3月13日にPCR検査を受けましたが陰性でした。これからも体調管理に気を付けて、新型コロナウイルス感染に罹らないように留意していきたいと思います。 〇「老爺心お節介情報」第34号は、以下の通りです。

Ⅰ 『地域福祉とは何かーー哲学・理念・システムとコミュニティソーシャルワーク』

〇拙著『地域福祉とは何かーー哲学・理念・システムとコミュニティソーシャルワーク』
(中央法規出版、2022年4月10日発行、3000円)を上梓しました。
〇本書の「まえがき」を添付しましたので参考にして頂ければと思いますが、地域福祉実践・研究の理論的課題を私の50年間の「バッテリー型研究」の自伝史に引き付けて書いてみました。本書は、私の50年間の地域福祉実践・研究の「集大成」です。
〇全国各地で、これからもコミュニティソーシャルワーク研修が進むものと考えられますが、その際に本書を使って頂ければ全てわかるように、“地域福祉の考え方”、“地域自立生活支援の考え方”、“住民の社会福祉を高めることの必要性と気を付けなければならない視点”、“地域福祉を推進する組織である地域を基盤とする社会福祉法人としての社協の性格、歴史的変遷”、“地域福祉を推進する方法論としてのコミュニティソーシャルワーク機能”についてまとめてあります。
〇とりわけ、現時点で考えられるコミュニティソーシャルワーク研修の考え方、それに必要な研修用のシートも収録してあります。大いにご活用頂き、コミュニティソーシャルワークの推進の役立てて頂ければと思います。

Ⅱ ICFの視点に基づくケアマネジメント方法を活用したソーシャルケア

〇私は、2001年のWHOのICF(国際生活機能分類)の日本語版翻訳に際し、その「社会活動」領域の作業班長を仰せつかりました。私自身、1960年代から障害者の学習・文化・スポーツ・レクリエーションの振興に取り組んでいましたし、社会福祉は憲法第25条の規定による社会権的生存権の保障のみならず、憲法第13条に基づく幸福追求権、自己実現を図ることも社会福祉推進の法源、根拠とすべきと考え、実践も研究もしてきましたので、2001年のWHOのICFの考え方である生活環境を改善することの重要性についてはさほど驚きませんでしたし、“今更”という感慨を持ったことは事実です。
〇しかしながら、厚生労働省がWHOのICFを翻訳し、その考え方を普及させるとなると話はかわってきます。私は、当時、厚生労働省の担当者に、“このICFの考え方を取り入れると障害者分野の施策の大幅な見直しが必要ですよ。状況によっては、障害基礎年金や障害者手帳のもつ意味が変わってきますし、障害認定に伴う制度自体の改編が必要になると思いますが、それでも行いますか”と質問したことを覚えている。
〇その当時は、生活環境の変化がサービスを必要としている人の生活意欲、生活方法、行動様式、生活圏域の拡大を劇的に変えるというイメージはさほどなかったことは事実です。
〇しかし、その後の介護ロボットの開発・普及、ICTを活用しての福祉機器の開発・普及の進展は目を見張るものがあり、これからのケアワーク、ソーシャルワークというソーシャルケアはICFの視点に基づく福祉機器の利活用を前提としたものでなければ“使い物”にならなくなってきています。
〇しかしながら、社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、障害者相談支援専門員などの養成・研修において、福祉機器に関する領域は殆ど“皆無”といっても過言ではありません。福祉機器を利活用しての生活環境を改善させることは、これからのソーシャルケアの実践においては不可欠となっています。
〇先日読んだ『奇跡の介護リフトー介護業界に風穴を開けた小さなメーカーの苦闘の記録』(森島勝美著、幻冬舎、1500円、2022年2月発行)は、是非多くの社会福祉関係者に読んで欲しい文献です。
〇本書には、自宅において介護リフトを利活用することによって、“寝たきりの高齢者”の生活変容、生活意欲などが紹介されています。
〇社会福祉(社会事業)は、戦前から福祉サービスを必要としている人の生きる意欲、生きる希望、生きる見通しを引き出し、支えることが重要であり、それが“積極的社会事業”であると言われてきましたが、まさに福祉機器はそのような機能を有しています。
〇その際に重要なことは、福祉機器には補聴器もその範疇に入っているということを忘れてはいけません。2021年3月に出されたWHOの「聞こえ」の保障にかかわる報告書で、“難聴がうつ病を誘発し、それが認知症へとつながっている”ことを指摘しています。
〇社会福祉関係者は補聴器も含めた福祉機器の利活用に関心を寄せることが肝要です。このことは、拙著『地域福祉とは何か』の中で、地域自立生活支援における福祉機器の利活用の重要性についても述べています。

(2022年3月24日)

大橋 著作 その2