「老爺心お節介情報」第49号
地域福祉研究者の皆様
社会福祉協議会関係者の皆様
未だ残暑が厳しい日々ですが、皆様お変わりありませんか。
くれぐれもご自愛の上、地域福祉実践向上に向けてご活躍下さい。
2023年9月18日 大橋 謙策
Ⅰ 『障がい者と地域社会の真の共生をめざして』(石橋須見江著、幻冬舎、2023年8月)を読んで
〇著者は、日本社会事業大学を卒業後、栃木県の特別支援学校の校長を務め、定年とともに社会福祉法人パステルを設立した。
〇本書は、著者が理事長を務めている社会福祉法人パステルが、障害分野のサービスを提供するだけでなく、如何に障がい者が地域社会の真ん中に位置づけられ、真の地域共生社会を作るれるかを25年間追い求めてきた実践の書である。
〇障がい者が従来の福祉の枠の中で生活できるようにするだけでなく、障がい者が地域づくりの担い手であり、障がい者も旅行を楽しみ、音楽を楽しみ、人との出会いを楽しめる権利を実現できるように追い求めてきた実践が書かれている。
〇社会福祉法人パステルがある栃木県南部の小山市は、絹村、桑村という地方自治体が存在していたように、かつて桑、絹、結城紬の産地であった。その廃れた桑に関わる産業を、障がい者を中軸に据えて、小山市行政、小山市商工会、JA等の関係機関を巻き込んだ実践を展開してきた。これらの事業は農林水産省をはじめとして、各種の表彰を受ける等高く評価されている。
〇と同時に、小山市間々田に「CSW(コミュニティソーシャルワーク)おとめ」を開設し、地域住民にも愛されるイタリアンレストランを開き、そこで月1回の音楽コンサートを開催している。さらには、桑の葉の摘み取り作業などを小学生や住民と協働することにより、地域共生社会を生み出す福祉教育の実践も行っている。
〇本書は、これからの社会福祉の在り方を考えるうえで、社会福祉関係者の必読の本である。是非読んで頂きたい。
Ⅱ 『参加・貢献の社会保障法――法理念と制度設計』(西村淳著、信山社、2023年2月)を読んで
〇2023年7月16日に、親交のある元日本福祉大学の学長をされた二木立先生から、以下のようなメールを頂いた。
(二木立先生からのメールの一部・2023年7月16日受信)
西村淳さんは、厚生労働省キャリアを経て、公募で神奈川県立保健福祉大学教授になり、社会福祉士資格も取得して、同大学では社会福祉やソーシャルワークを教えています。
早稲田大学の菊池馨実さんの指導を受けて博士号(法学)を取得し、本書では菊池さんの「自由規定的社会保障論」をさらに徹底・純化して、個人は参加・貢献の「見返り」として「社会保障の権利を得る」と主張しています。
私は、西村さんが厚生労働官僚だった時からの友人で、社会保障強化派&社会福祉に理解のある「良識派」と大いに期待していたのですが、このスタンス・立論には強い違和感を感じました。
この本のもう1つの特徴は、「総論」(原論)で終わるのではなく、「保健医療福祉」の法的構造についても論じていることで、「ソーシャルワークの法的構造」や「地域福祉の法的構造」についても論じています。
この本は、「医療・福祉研究塾(二木ゼミ)」の8月(19日)研究会で、以下のように紹介・推薦する予定です。後半では私の疑問も率直に書きました。ただし、私は「はしがき」を読んだ後、本文は拾い読みしただけです。
大橋先生のこの本の評価をご教示いただければ幸いです。
(筆者からの当面のメールを頂いたことへの返信・2023年7月17日発信)
先生のメールを読んで、「地域福祉の法的構造」というのがよく分かりません。
権利論、法制論、現行の法体系の面からのみ地域福祉を見るのでしょうか。
廣澤孝之さんの『フランス「福祉国家」体制の形成』(法律文化社)や金澤周作さんの『チャリティとイギリス近代』(京都大学学術出版会)・『チャリティの帝国』(岩波新書)などを読んでも、社会哲学、社会システム論としての地域福祉を考えることが大切なのではないかと思います。それを日本の法構造からのみ”見る”のは、法学分野からの博士論文だからなのでしょうか。
(筆者が本を読んで二木立先生に送ったメール・2023年8月21日発信)
以前、感想を聞かせて欲しいと言われていた、西村淳著『参加・貢献支援の社会保障法』を読ませて頂きました。
①従来の社会保障法体系とは異なる視点として、「参加・貢献支援」という考え方から社会保障法体系を立論しようとする視点、意欲は大いに評価します。
②しかしながら、住民の“社会参加と社会貢献”は、社会保障法上の「参加・貢献」に留まらないわけで、その整理がもう一つかなという感がしました。
それは、以前のメールで伝えましたように、社会哲学、社会思想、社会システムとの関りを意識したうえで、整理をしないとダメだと思っています。
1601年のエリザべス救貧法を取り上げていますが、同じ年に作られた「Statute of Charitable Uses」という国民の社会参加におけるボランティア活動の保障には触れられていない等やや論証の枠組みが荒い感がします
フランスの「社会保障体系」等も考えると、日本の社会保障法体系の枠組みの中で、「参加・貢献支援」を考えるということは、よほど限定的に考えないといけないのかなと思います。
私なりに言えば、“日本の社会保障法体系における”参加・貢献支援“の位置と意義”に関する研究ということなら納得できます。
③第6章の「地域福祉の法的構造」は、正直、“期待はずれ”でした。ただし、P.162の検討の3つの課題や、P.166の3つの指摘は、法体系とは別に大いに議論すべき課題だと思いました。
④第5章のソーシャルワークの法的構造は、イギリスとの比較において、参考になりました。
ただ、1998年のイギリスにおけるソーシャルケア(ソーシャルワークとケアワークとの一体的研修等)との関りも論究してほしかったですね。在宅福祉サービスの時代には、ソーシャルワークとケアワークとの一体的提供が重要であり、その点での「社会福祉士及び介護福祉士法」の問題点も論究してほしかったです。
Ⅲ 健診とがん告知・その⑥
1)運転免許更新と認知症機能検査
〇白内障の右目の手術が終わったので、運転免許更新に必要な認知症検査8月14日に行った。
〇そもそも白内障の手術をする契機も、運転免許の更新で視力の検査があり、前回それがギリギリのラインで合格したこともあって、眼科医を受診することになった。
〇8月14日は、お盆の休みで空いているのではないかと予約したものの、府中自動車試験場は案に相違して、人でごった返していた。
〇認知症検査は、数字が羅列されている表の中の該当する数字に斜線を時間内に引く検査、4種類の絵図が4枚示され、それを10分後ぐらいに書き出す検査、試験当日の年月日及び曜日と検査が行われているおおよその時間を書く検査の3種類であった。
〇前回は、すべてパーフェクトであったが、今回は数字に斜線を引くもので、最初の検査は2種類の数字でこれは時間内に引けたが、2度目の検査は3種類の数字に斜線をひくものであったが、残念ながら最後の行(多分数字が書いてある行は10行で、1行20字ぐらいだと思う)まで引けなかった。
〇絵図の記憶の検査では、計16種類のうち、最初の試験(何もヒントがなく思い出して書く)は7種類しか思いだせなかった。第2回目は、絵図に関し、楽器とか乗り物とかというヒントがあり、15種類書けたが、どうしても思い出せない絵図が一つ(鳥)あり、今回はパーフェクトとはいかなかった(後日談・思い出せなかった鳥はペンギンで、試験の翌々日の8月16日にふっと思い出せた)。
〇試験の教官は、絵図をスライドで示しながら、それを記憶させようと、その絵がなんであるかを高齢者に声を出して答えるよう促していた。その際、“言葉に出して答えると記憶が良くなるから”と説明し、「外化」機能の重要性を説いていたのがおもしろかった。普通、試験といえば落とすものというイメージがあるが、ここでは高齢者に優しく、記憶しろ、記憶しろと説いている。これでは認知機能検査にならないのではと思いながら、「外化」の重要性がいわれているので、皆さんに声を出させている。残念ながら、私はそれでも一つ思い出せなかった。「鳥」の絵図があったことも思い出せていない
〇3年前の免許更新時より、やはり認知機能が落ちているのだろうか。検査の結果は、合格で、8月17日に、運転の実地検査を受けることになった。認知検査料は1050円であった。
〇運転免許の実地検査も8月17日に行い、無事合格し、後は10月3日に、運転免許の交付を受けるだけになった。
2)左眼の白内障の手術も無事終了
〇右眼の白内障手術は8月3日に終わり、予後も順調で問題がなく、視野が明るくなるということは気分の上でも随分と違うものだと実感した。
〇9月7日に左眼の手術を行った。右眼は手術で視力が1・5まで回復したが、左眼は手術の翌日の検査では0・9までしか回復しなかった。しかしながら、1週間後には左眼も視力が1・5まで戻り、新聞をメガネなしで読めるようになり驚いている。
〇白内障の手術は予後が大切だと言われていたが、術後1週間もすぎ、洗面も頭も洗うことができるようになり、術後の経過の順調さに安堵している。
〇点眼薬4種類は術後1か月は点眼するようにとのことで、少々煩わしいが、視力の回復を考えたら我慢するしかない。
3)前立腺がんの予後診察
〇重粒子線治療を受けた神奈川県立がんセンターに8月29日に行き、予後診察を受ける。医師は順調に治療が進んでいるので、次回診察は2024年2月28日の6か月後にすると言われる。
〇9月14日には、日本医科大学多摩永山病院での診察を受ける。PSAの数値が、前回よりも減少し、0・008 になっている。多摩永山病院の医師も経過は順調で、次回の診察は12月14日にするという。
〇外見的には治療効果は見えないが、PSAの数値を見る限り、前立腺がんの治療は順調だと安心した。後は、2024年7月までのホルモン療法を続けることである。夜間頻尿もだいぶ時間間隔が空いてきて、少し安堵している。
〇これで、私の80歳前の体のメインテナンスは一応終了した。内臓とADLには今のところ問題ないので、これからは食事に気を付けながら、毎日1万歩のウォーキングを志し、そして毎日楽しい晩酌を続けたいと思っている。
〇この「健診とがん告知」は閑話休題とさせていただきたい。
(2023年9月18日記)
(備考)
「老爺心お節介情報」は、阪野貢先生のブログ(「阪野貢 市民福祉教育研究所」で検索)に第1号から収録されていますので、関心のある方は検索してください。
この「老爺心お節介情報」はご自由にご活用頂いて結構です。