阪野 貢 のすべての投稿

地域と学校のパイプ役になる

学校の教員を退職して 児童委員になった
問題のある家庭で 育った子どもたちの行く末が 
気にかかってしょうがなかった

クラスを持っていたときに とても心配な子がいた
家庭訪問をした
家の中は 掃除もままならない様子で 段ボールが 雑然と積まれていた
食べ残しのカップが 干からびて 部屋の隅にあった
ネズミがいてもおかしくない 家だった
母親は 少し知的な障がいがあるように 思えた
子どもらは 明るく元気ではあったが 学校に着てくる服は 汚れていた

下の女の子は 歯磨きもしていない
学校では 昼食後歯磨きを励行していたが  
何度用意してといっても 叶わなかった
歯ブラシを用意して 子どもの歯磨き指導を 校長にお願いした
まわりの子の目もあり 相談したら 二つ返事で引き受けてくれた
父親は 稼ぎがあるのか 経済的には貧しくはない
しかし 家庭環境を考えると 心配の種は尽きない
かといって 特別何かをしなければならないという 状況でもなかった
問題が起きない限り 家庭に入っていくことは なかなか難しい
様子を 見守るほかなかった

児童委員という仕事を 知ったのは
児童委員が 学校によく出入りしていたからだ
校長室に来ては 校長と雑談していた
校長が 子どもの問題を話しながら 
もしもの時の 支援の体制を 地域にお願いしていたことを 後で知った
校長室は 地域のサロンのように 地域の人たちが 千客万来やってきた
だから 家庭環境も含めて 地域に子どもの見守りを 頼んでいたという
学校の目の届かないところで 地域の力を借りていたのだ

児童委員は ことのほか気にかけてくれて 
特に学校でのいじめを 心配していた
だから 校長も含めて 教員たちは 
子どもたちのサインを 見逃さぬよう
校内で いつも情報をやりとりして 事に備えた
問題の芽を 早めに摘むよう 生徒指導にも 力を注いだ
そして 少しでも兆候があると 迅速に対応した

その学校から異動し いつしか退職を迎えた
そのとき 自分がやり残してきたことを 思い返していた
支援の対象にはならない ボーダーの子らを 支えてやれることはないだろうか
一人の教師として 本当に個々の子どもや その家庭と向き合ってきたのだろうか
自分に問いながら 
あの校長のように 地域とのパイプを太くすることで
問題を 事前に防ぐことも 
そして 起こったときには 地域とともに解決に動くことも 
できるのではないか

はたと気づいた
学校と地域をつなぐ パイプ役が必要だと
だから 家庭と子どもを支える 児童委員を 引き受けた
これから 一つひとつ 学ぶことが 子どもを支える力になると 信じたい
児童委員
きっと それが やり残した 最後の仕事になるだろう 

〔2019年8月4日書き下ろし。11月民生委員児童委員の研修会で使う資料の一つで未公開。先生の問題が取りざたされる中、こんな先生もいてほしい。いやきっといる〕

暁に舞う―妹琴代を追悼して―

昭和44年11月20日、妹鳥居琴代は、交通事故により18歳の生涯を閉じた。
今年五十回忌を迎えるにあたり追悼の意を込めて、彼女の詩を披露することをお許し願いたい。公開することが、せめてもの供養であり、生きた証であると…。
 
暁に舞う

ある日 少女は目を閉じて
心の唄を きいてみた
それは淋しく 静かにひびき
安らかな 祈りを灯して
咲く花の 命を唄う

あの日 少女は愛を知り
嬉しいはずのほほえみが なぜか悲しく
空を仰いでいながら
暁の目覚める夜半の音に 包まれながら
咲く花の命は 尽きた

暁の舞う夜に 少女は身をとじた
暁の恋に破れて 少女は身をとじた
暁と化して 少女は身をとじた

〔1967年10月1日に書かれた作品。両親と共に眠る墓の横に建てた歌碑に、その一節を刻んだ詩である。彼女が残した数編の詩を、この世に生きた証として、これからも紹介していくことをご容赦ください〕

本をつくる

本をつくる なんとこころ躍る 楽しきことか
本をつくる なんとこころ動く 嬉しいことか
本をつくる なんとこころ弾む 愉快なことか
本をつくる なんとこころ昂(たか)まる 熱きことか

本をかく こころを澄まし 声を聴く
本をかく 目を凝らし 丹念に行間を読む
本をかく 頭をフルに働かし イメージを膨らませる
本をかく 手渡すときの喜ぶ顔が 創作のエネルギー源

三日前 外堀を埋めた
印刷業者との 綿密な打ち合わせ
表紙・裏表紙のデザインの提案 プロの手直しに期待大 
中表紙の色紙は 師直筆の書
カラー写真の特別ページ 紙質が光沢紙になり 値段も上がる 
装丁の仕様 ちょっとお洒落に ハードカバーはパス 
紙質 反射の少ない紙色 
そして印刷部数
大枠決まり 原稿持ち込みでの印刷製本
提示価格は 予想より安価だ
個人負担の非売品だけに 価格は重要ポイント
安堵する

納品期日を決めた
そこから遡(さかのぼ)って 印刷作業 二校 初校 原稿締め切り
スケジュールが 決まった
だから 二人は逃げられなくなった
もう書くしかないと追い詰めて 腹をくくってやるしかない

恩師の自分史を インタビューをしながらしたためる
福祉に一生を奉じた 八十年の人生を 
大切な人との出会いを「ひと物語」で紡ぐ 二人旅
旅の終着駅にたどり着くまで 楽しい豊穣の時を過ごしたい
いまようやく 二十八歳の新婚時代を書き終えた

書名『邂逅』(かいこう)
師のおもいを書き残したいという 強い衝動から
最初に 思い浮かんだことば
わたしもまた 師に生かされていると 知らしめることば
師の寛容なこころに 抱かれて
その恩情への せめてもの感謝を 拙(つたな)いことばでしるす
それがいま 私に託された 至福の喜び

本をつくる このワクワク感が 二人にはたまらない 

〔2019年10月19日書き下ろし。無条件に人を信じる。ただそれだけ。その人たちとの『邂逅』こそ、私の人生の至宝である〕

そこなの(その2)

民主主義の何なのかも知らずして 横柄な態度で指導する担任教師
その言動を正しいものと 正直に受けとめる素直な子どもたち

民主主義とボランティアを教えるには 最適な教材だった
だから 全国の多くの中学校で 授業した
参観した教員の中には 苦々しい顔を露骨に見せた者もいた
授業の後始末を しなければならない 
真実に抗(あらが)う面倒な言い訳を 考えていたのかもしれない
授業は 子どもよりも教員への 問いに他ならなかった
授業は 現状の学校教育への挑戦である
批判を承知で 子どもの前に立つ

なぜ担任は 三人の子が 別の子に投票したってわかったの?
子どもたちは 考えた
しかし 思いつかない
子どもたちの 行き詰まった頃合いを見計らって
みんなそう わからないということが 普通なんだ
それだけみんな 当たり前だと 思い込んでしまっているんだ

選挙って 自由投票だよね
誰に投票したかわかるって そもそもおかしくない?
このクラスで 三人投票しなかったってわかったのは
クラスごとに 開票したからでしょ
なんだ そんなことか 
あまりに簡単なトリックに 引っかかったとばかりに
半ば あきれた顔の子どもたち 
このとき 事の重大さに気づかせて
子どもたちの心に 真実を刻んでいくのが 
この授業の 醍醐味です

選挙の投票は 個々の自由意志よる自己決定にある 
誰に投票したのか 誰にも知られないという原則があってはじめて
選挙権は 権利として保障される
そこが 全く分かっていない 教師と子どもたちだった
民主主義を 形骸化させていることすら 気づくはずはない
生徒会役員選挙という機会を 見事にはき違え 集団統制にすり替えて 
集団決定に 従わない子を糾弾・排除する システムであることに
なんの疑問も感ぜず さも正しいことと正当化し
学級の多数決の決定こそ遵守せよと 正義をぶって 平気で強要する
民主主義の基本すら身についていない 無能な教師たちが 
大上段にかぶって 子どもを断罪するのだ
この欺瞞(ぎまん)に満ちた言動こそ 断罪されなければならない
民主主義の精神は 自由意志を お互いに尊重しあうことから 育つのです
選挙は 民主主義を学ぶ 具体的な制度です
悪用されることで その精神は愚陋(ぐろう)され 制度は朽ちていきます

処世術 事なかれ主義に徹すること
根回しかけて みんなで決めれば 文句も出ないし 責められない
会議は 論争するのではなく 適当に空気を読んで 妥協点を見つけること
そう割り切れば 世間は生きやすい
ラインやSNSで 仲間はずれや陰口を 叩かれることもない
みんな 世間を生きている

事実は 小説よりも奇なり
世間の 一番醜いところを 見事に教わり
そこで 疑問も待たずに 平気で仲間を 
担任と一丸になって 意地悪し シカトするクラスメート
クラスの合意を乱した奴への 集団制裁は正義です
主犯とされた子は 卒業までの2年半
ずっと いじめられ続けた
毎朝「なんでお前 席に座っているんだ」とまで言われ続けた
クラスの決定に逆らった子への 執拗(しつよう)な かつ非情なバッシング
征服欲 支配欲 自己顕示欲 粘着性に暴力性 プラス出世欲に満ちた 
半端ない傲慢(ごうまん)な反面教師も いまは校長先生しています
自惚鏡(うぬぼれかがみ)に映る自分に いまも酔いしれていることでしょう
いじめられた子 心に深い傷を負いながらも 逆境にひるまず 
強く優しい思いやりあふれる大人に 成長したよ

授業のまとめです
ボランティアは 決して人を傷つけることはしません
ボランティアは 一人ひとりの意思を尊重にします
ボランティアは 自分で決めて生きることを優先にします
ボランティアは ことの善悪をわきまえた行動を本意とします
そこで 対等な関係をつくるということが《ボランティアする》ということです 
そこに 人として この世に生きる価値が生まれてくるのです

※自惚鏡(うぬぼれかがみ):容貌を実際よりもよく見せる鏡。またうぬぼれて絶えず見る鏡。

〔2019年10月18日書き下ろし。スクハラは教師として断罪すべき最低の行為。そのことに気づけない者たちが闊歩する。ボランティア学習は大事な問題提起です〕

「あなた自身があなたのまちです」―「シビックプライド」に関するワンポイントメモ―

「You Are Your City(あなた自身があなたのまちです)」(下記[1]164ページ)

〇10年ほど前から、地方自治体の営業活動(「売り込み」:牧瀬稔)を意味するシティプロモーション(和製英語)の劇的な進展が図られ、それとの関連や、公共空間デザインやまちづくりの現場などにおいて「シビックプライド(Civic Pride)」(株式会社読売広告社の登録商標)という言葉や概念が注目されている。
〇その背景には、少子高齢化や人口減少、経済の低成長などによって特徴づけられる「縮小社会」の到来、とりわけ地域経済の低迷と地方財政の逼迫化、地域コミュニティの担い手不足がある。とともに、地方分権化の推進による都市間競争の発生、より具体的には持続可能なまちづくりを進めるために必要な経営資源(ヒト・モノ・カネ)の確保・調達をめぐる地域間の競争の激化(「伊賀市シティプロモーション指針」)がある。そしてまた、社会事象として地域コミュニティの衰退や地方崩壊が進む反面、地域や地方に新たな生き方や働き方を求め、自らの存在価値を見出そうとする人々の価値観の転換、などがある。
〇筆者(阪野)の手もとに、「シビックブライト」に関する本が3冊ある。(1)伊藤香織(いとう かおり)・柴牟田伸子(しむた のぶこ)監修、シビックプライド研究会編『シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする』(宣伝会議、2008年11月。以下[1])、(2)伊藤香織・柴牟田伸子監修、シビックプライド研究会編『シビックプライド2【国内編】―都市と市民のかかわりをデザインする』(宣伝会議、2015年9月。以下[2])、(3)牧瀬稔(まきせ みのる)・読売広告社 ひとまちみらい研究センター編著『シティプロモーションとシビックプライド事業の実践』(東京法令出版、2019年3月。以下[3])がそれである。
〇シビックプライドとは、「市民」(主体的・能動的で自律的な活動主体)が都市(地域)に対してもつ誇りや愛着のことである。それは、単なる「まち自慢」ではなく、また地域(地元)への親近感や情感的な郷土愛とも多少ニュアンスを異にする。つまり、シビックプライドは、自分自身が関わっている「この場所」(まち)をより良くしていこうとする、ある種の当事者意識に基づく自負心を意味する([1]164、[2]126、[3]50ページ)。その点において、例えば小学校社会科中学年の「地域学習」の推進や、行政や社協などによる「市民協働のまちづくり」「市民主体のまちづくり」への住民参加(参集、参与、参画)は、シビックプライドを醸成する重要な要因になる。ソーシャル・キャピタル論や共生社会論、そして「まちづくりと市民福祉教育」に通底するところでもある。
〇シビックプライドは、「この場所」を「知る」ことによって、「誇り」に気づき、「愛着」がわくことから始まる。その気づき(情報や気持ち)を対話型のコミュニケーションを通じて他者に伝え、「自分ごと」(「自分ごと化」)を「自分たちごと」(「みんなごと化」)にする。人と人がつながり、まちの多様なヒト・モノ・カネ・コト・情報などとの関係性をつくりだす。それは、時間や空間を超えて広がり深まる。そして、より良いまちづくりのアクション(行動)を起こす。さらに、その活動を評価、改善し、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のPDCAサイクルを効率的に回しながら継続的に取り組む。
〇すなわち、シビックプライドは、「誇りの種を探す」「魅力を掘り起こす」ことから始まる。シビックプライドは、一人ひとりが抱くまちへの思いであり、それに基づくアクションである。そして、それらの連鎖や関係性を広め、共働化・継続化することによって、その思いやアクションは次代のシビックプライド(誇りや愛着の醸成・向上)になる。シビックプライドでまちは変わるのである。([2]136~139ページ)。
〇シティプロモーションとシビックプライド事業について、そのひとつの事例として「伊賀市シティプロモーショ指針」(2017年3月策定)の一部を紹介する。伊賀市は三重県の北西部に位置し、伊賀流忍者の里や松尾芭蕉の生誕地として知られる、人口約9万1,000人(2019年9月現在)のまちである。

〇筆者の手もとには[1][2][3]のほかに、木下大生(きのした だいせい)・鴻巣麻里香(こうのす まりか)編著『ソーシャルアクション! あなたが社会を変えよう!―はじめの一歩を踏み出すための入門書―』(ミネルヴァ書房、2019年9月。以下[4])がある。[4]には、「このままではいけない」(危機感をもつ、問題提起する)を「なら、こうしよう」(社会を変える行動、ソーシャルアクションを起こす)に変えた人々のリアルなストーリ(実践事例)が収録されている。[4]の編著者である鴻巣にあっては、ソーシャルアクションとは、「誰にとっても住みよい社会をつくるための行動」である。また、[4]のキーワードである「当事者」とは、「ある問題、あるいは困難が生じた時、その問題から直接影響を受ける関係者」である。「当事者力」とは、「『私は』で始まる語り(Narrative,ナラティブ。ライフストーリー)から生まれる力」、換言すれば、何かの困難の当事者である・あった経験によって芽生え、揺り動かされた感情や行動力、を言う。そして[4]は、「あなたのアクションは本の中にはありません。フィールドに出かけましょう」と、読者に訴える(「ちょっと長めのはじめに」ⅰ~ⅶページ)。
〇[4]のもうひとりの編著者である木下は、「ちょっと長めのおわりに」のなかで「『社会を変える』ことについての試論的総論」を論じている。木下の言説のひとつの要点をメモっておくことにする(抜き書きと要約。語尾変換。見出しは筆者)。

社会を動かすのは最終的には「当事者力」である
「社会を変える」きっかけを作るのは必ずしも当事者とは限らないが、その後の行動・活動には必ず当事者が介入するべきである。
当事者不在のソーシャルアクションは、活動・行動している人の自己満足に終始してしまう可能性を孕(はら)み、場合によっては当事者をより窮地に追い込む状況を作り出さないとも限らない。変えられるべき社会的課題の被害を最も被っている当事者の意見を聞かなかったり、蔑(ないがし)ろにするべきではなく必ず何かしらの形で当事者の関わりを担保することが求められる。(220ページ)

社会を変えるには「変換力」を持つ人が必要である
「社会を変える」とは、①法律を作る・変える、②状況(状態)を変える、③慣習を変える、④人々の意識を変える、ことである。そのためには、①変えたいことの明確化・具体化(問題をカタチにする)、②状況についての具体的な語り(自分の状況を具体的に語れるようになる)、③目的の設定(何をめざすのかを明らかにする)、④仲間を作る(同じ仲間意識がある人とつながる)、⑤理解者を増やす(社会の人々に知ってもらう)ことが求められる。これらは、社会を変えようとする際に最低限必要とされる要素であり、「社会を変える」具体的なやり方・方法である。(211~212、223ページ)
社会を変えようとする場合に必要なのは、自分の何かしらの体験を、権利が侵害・抑圧され、生活に困難を来たしている当事者の経験や感情に「変換する力」を持つ人である。別言すれば、当事者(他者)の生きづらさや社会課題を緩和・解決するためにその問題状況を自分に引き付け、当事者に寄り添い、直接的あるいは間接的な行動・支援を起こす・行う人である。この「変換力」は「共感力」あるいは「権利意識」と言ってもよい。(219、230ページ)

「社会を変える」とは人のつながりを結びなおすことである。([4]帯)

そこなの(その1)

ある中学校の体育館
全校生と ボランティアの学習をした

君たちの学校では 生徒会役員の選挙をしてるかな
うなずく子どもたち
クラスから立候補者を推薦して 選挙運動もするのかな
うなずく子どもたち
自分のクラスで 応援した子が当選すると嬉しい
うなずく子どもたち

とある中学校で 生徒会の選挙があったんだ
1年のクラスで推薦した子が当選して みんな喜んだ
担任が 頑張れよって励ました後に
ところでみんな このクラスから こいつに投票しなかったやつが 三人いる
怒らないから 名乗り出てこい
誰だ 投票しなかったやつは さっさと名乗り出ろ
だんだん激昂(げっこう)してきて 怒鳴り出す
三人が 名乗り出た
理由は 簡単だった
クラスで推薦した子よりも 対立候補が適任だと思ったからだと

さて質問
ここには どんな問題があるのか わかるかな
ゴソゴソと周りで 相談し始める子どもたち
おかしいなと思ったこと 何でもいいよ
正解を求められると思うと 萎縮(いしゅく)する子どもたち
なんでもいいから 気づいたこと話してみて
こんなとき 助け船を出してくれる ボランタリーな子は必ずいる
「クラスのみんなで決めたことなのに それを破るのはおかしい」
「クラスで決めたことだから それを守るのは当たり前のことです」
「クラスの和を乱したんだから ダメなものはダメ」
「仲間への裏切り行為だもん」
「だから 先生に叱られても当然だと思う」
うなずく子どもたち
そのとおりだね みんなで決めたことを守らないのは 許せないね
うなずく子どもたち

クラスの決定は みんなが守らなければならない 大事なこと
クラスの仲間の和を 決して乱してはいけない
それを破るのは 背信行為
先生が怒るのは 当たり前で 支持します

そこかい?
そこなの?
えっという顔をしだす 子どもたち
生徒会選挙だよね
そうだよという顔をする 子どもたち
これも選挙だよ
だからどうなのという顔をする 子どもたち
選挙って 自分が投票したいという人を 選ぶんでしょ
だから クラスで選んだ人に投票して 何が悪いという顔をする 子どもたち
三人の子は 自分がいいって子を 選んだだけだよね
それって 裏切りなの?
少し戸惑った顔をしだす 子どもたち

もっとおかしなことに 気がつかない?
クラスで決まったことを守ることだけに 注意がいって
みんなは大事なことに 気がついてないんだ
それどころか 担任は 重罪を冒したことすら 気づかない無知な人だったんだよ
君たちも 実は担任やそのクラスの子と同じ その無知に中にいるんだ
でも今日からは 賢い人になってほしい

質問しますよ
担任は 三人の子が 別の子に投票したって なぜわかったの?

〔2019年10月14日書き下ろし。長くなりそうなので今日はここまで。なぜわかったのか、すぐにわかりますよね。この担任のその後の子どもへの対応気にかかりませんか〕

ニッポン ガンバレ

今秋は スポーツ満載 真っ只中

陸上世界選手権ドーハ大会
主な競技だけのテレビ中継 見せてもらった
マラソンと競歩は 夜中実施のロードレース
日中の酷暑を避けた夜中でも 気温下がらず異常なレース
リタイヤ続出 記録も低迷 想定済みか
この教訓 はしゃぎすぎず もっとクールダウンして考えて
人間の最も崇高な運動能力の極限を 表現するにふさわしい
オリンピックの舞台は どこなのか
東京だけが 日本じゃない
東京オリンピックで この2種目を
IOCは 札幌開催の検討を始める
賢明なる勇断を下してほしい!
人類のために 札幌においでよ 
この経済効果は いらっしゃい
でも 冬期オリンピックは いらないよ
後の経済不況が どこでもお約束のプレゼント
冷えてる北海道 ご遠慮します

プロ野球 日本シリーズ
日本ハムファイターズが出ないから 見ません
サッカー ルヴァン杯決勝
コンサドーレ初栄冠 見るかも知れない
これって 郷土愛?

サッカーワールドカップ2次予選 
アウエーでは ライブ中継がないから 興味半減
格下相手のゲームでは もっと大胆な采配をしてほしかった 
久保建英の起用に不満が残る いちフアン

バレーボールワールドカップ 女子5位 男子4位 
テレビ局のショー化した演出に 食傷気味
昔は少年団の子どもらと 応援に行ったのに 
いまは ちょい見で 終りました

ラグビーワールドカップ 見ています
ラガーマンの 胸に咲く桜のマーク 美しい
男の肉弾相打つ 勝負を賭けた 壮絶な80分の戦い
数万人の観客は 赤と白のラガージャージに身を包み
会場一杯に 声枯れんばかりの 熱狂の大合唱
嫌が応にも奮い立ち 宿敵粉砕 勝利をつかみ 
初のベスト8 決勝トーナメントに 進出決定
明夜開催(20日)の南アフリカとの 準々決勝
日本中が きっとまた 興奮の坩堝(るつぼ)と化して 歓喜の声がわき上がる
見ます! 応援します!
にわかフアンの ひとりとなりました

日の丸を背負い闘う ラガーマン
日の丸を振って 手に汗握り 声援の限りを尽くす応援団
みんな みんな 愛国心を発露する
みんな みんな 愛国者然として 立ち上がる
ノーサイドの笛が 吹かれるまで
みんな みんな 日本頑張れと 祈り続ける

スポーツは 一時(いっとき)の歓喜を与える 人生のカンフル剤
これこそ 愛国者もどきの感情を共有する 狂気にも似た 狂喜あるいは侠気
そこにつけいる輩が スポーツ愛好者を愛国者にすり替え 席巻する  
愛国や愛郷のこころを育み 強める狂育こそ 
厳に 警戒しなければならない

一晩限りの熱狂は 酔い覚めと共に 
愛国者然とした熱いおもいを 
現実の世界に引き戻し 祭りの後の余韻を 冷ましてゆく
日々の心の空しさを紛らわす 夢の舞台の幕が下り
冬の到来を 静かに待ちたい 

〔2019年10月16日書き下ろし。スポーツを応援する姿に愛国者の狂気がオーバーラップする。日常にある愛国者然とした狂喜に、私もまた身をさらしているのだ〕

階段

市営住宅の5階まで 階段を上る
エレベータのない 古い集合住宅

建った当初は 若い世帯で溢れていた
若者たちは ここで子育てをして 
社会に 子どもを送り出した
人生の大半を ここで過ごした
そしていま ここは老人世帯で溢れている

元気なうちは 階段も苦にはならなかった
買い物の荷物も 加齢とともに 少なくなってくる
階段が一番のバリアだ
階段が 健康のバロメーター
体力の衰えを実感する 体力診断装置

外出するのが だんだん億劫(おっくう)になってきた
出不精は いまは引きこもりって 言われる
孤独死するケースが多い イエローサイン
だから そうならないようにと 
団地の中で 安否確認する奇特(きとく)な人もいる
ありがたいことと 感謝している

最近妻の体調が悪くなって 心配している
病院に連れていっても 階段の上り下りが 一番こたえる
だから 我慢して 薬のなくなった時にしか 病院にはいけない
いまは 気遣ってやれないことが 一番辛い
子どもでも 近くにいれば助けてもらえるが 離れていては我慢するしかない
もう少し 二人で頑張るしか ない
ただこの先 どうしたものかと 思案するばかりだ

「こんにちは」
「どちらさんで?」
インターホーンごしに相手を確認
初めて見る人だ
「この地区の担当の民生委員の伊東です」
ドアを開ける
「こんにちは」
「何か御用で?」
「この団地で 65歳以上の方のお宅にお邪魔して 何かお困り事があればと 
皆さんのお宅を訪問しているのです」
「それはご苦労様です」
「いま同居されておられるのは 奥様お一人で 夫婦二人でいらっしゃるのですね」
「はい」
「何か お困りのことでもあれば お話していただければと思います」

このお宅の困っている様子は 近所の方からお聞きした
初めて伺うお宅の情報は こうして足で回って 手に入る
少しでも 何かのお役に立てばと思いながら
今日も 団地の階段に挑む 私の体力づくり
どんなに 崇高(すうこう)な思いを 持っていても
民生委員に いま求められるのは この階段を上り下りする体力なのだ

この階段の先に 私を求めて待っている人が きっといる
その笑顔に 会いたくて 
一段目に 足をかけた
いつもここが 私の仕事のスタートライン

〔2019年10月16日書き直し。団地をまわる民生委員のご苦労を想像する。プライバシーにどこまで踏み込んでいいのか悩みながらも、支援を必要とする人の元に向かう〕

煎じ薬

処方箋を ようやくいただいた
出世欲 大さじ三杯半
これがそもそもないと 効用ゼロ できるだけ強くすること
ワル知恵 大さじ二杯
頭をフルに働かせ 敵の裏をかくスキルをアップすること
心づけ 世間並みを装って 大さじ一杯
相手の懐に入る手土産だから 欲しいものを感知すること
おべんちゃらとおべっか たんまり
もうこれは天井なし 上司をいい気分にさせる最良の薬材
そうそう 忘れちゃいけないもの コネクション
小さくてもあることが一番 なければ何としてでも作ってください
これらを 清水で煎じて 熱いうちに呑んで下さい
清水のミネラルで調和され 即効性がアップします

服用の注意書きは よく読んでください
羞恥心は ゼロにすること
自尊心は 完全に放棄すること
相手より能力が上だと 決して悟られないこと
腰巾着のように ついてまわること
常に敵を貶めることに 集中すること
なお これは必須条件です
ひとつでも怠ると 効用はゼロないしマイナスです
時には リスクを生みますので 小心者は ご遠慮下さい

期待される効果です
上司に 気に入られる 
身分不相応な役職に就く
言い訳 立ち回りが 上手になる
敵愾心を押さえて 笑顔で張り倒すことができる
できないことは みんな部下に責任転化できる
同類が 手もみして集まってくる
大物らしき気分が 高揚してくる
結果は 追って知るべし

秘密裏に 煎じ薬『Kobirun』(コビルン)販売中
あなたの個人データ 診断します
分析して あなた好みの処方箋を おつくりします
なお 健康保険の対象外です
料金は あなたの出世欲の強さが バロメーターです
後日 直接ご相談いたします

あっ ちょっと お待ち下さい
誰かが 情報を漏らしたようです
「ヤバいぞ! すぐ切れ!」

「世渡り上手は 実力よりも 媚び方です」
『Kobirun』の煎じ薬を いまも探し求めています
入手ルート 誰か知ってる人 いませんか?

〔2019年10月12日書き下ろし。実力もないのにという、羨望の的になる人の努力を称賛したい。『Kobirun』を服用しなくても、実力で媚びる力を発揮しているのです〕

故郷に帰る

東京に発つ朝
少年は 玄関口で見送る人たちに
もう二度と ここに帰ってくることはありません
ありがとうございました
そう言い残して 旅立った

少年は 東京の専門学校に入学した
青年となった 2年後
念願のホテルマンになった
なりたい仕事に就けたことは
青年には 至上の喜びだった

4ヶ月後 児童養護施設の玄関口に立っていた
出迎えた人たちは 驚いた
啖呵を切って 出ていったのに どうして?
青年は すいませんでしたと 深々と頭を下げた

養護施設で育った青年は
2年前 その思い出を封印して
キッパリケジメをつけて 
夢に向かって 新しい世界へと旅立った

夢は叶った
仕事も楽しかった
でも こころが満たされなかった
日ごとに やりきれないむなしさが わき起こってきた
何が原因なのか よくわからなかった
都会の空は 何も答えてはくれなかった

休みをもらった
羽田から 北海道に飛んだ
施設の玄関口に立った
恥ずかしく 会わす顔がなくて 緊張もしていた
園長が お帰りなさい 
と笑顔で出迎えた
青年の目から 涙がこぼれた
ここが こころを満たしてくれるところだと
こころの底から 感じた瞬間だった

人は 自分の居場所を探し求める
施設での生活を 余儀なくされた少年時代
こころの痛みを 感じながら成長した
ここから逃げ出したいと 何度思ったことだろう
だから 高校卒業は 施設との縁切りの再出発の日だった 

しかし 東京の空の下
青年は 夢が叶った喜びを
ともに喜んでくれる人が 誰もいなかった
ひとりぼっちであることを 知らされた
だから ぽっかりと こころに穴があいたように 
むなしく生きていたのだと

出迎えた職員や子どもたちこそ
彼のこころの故郷であり ぬくもりだった

〔2019年10月11日書き下ろし。校長時代道内の児童養護施設の園長から電話がかかってきた。先生聞いてと。興奮気味に話す端端から喜びが伝わってきた。施設の職員にはなによりの贈り物だった。心傷ついた子どもを護る施設職員への感謝と激励を込めて記す〕