阪野 貢 のすべての投稿

老爺心お節介情報/第5号(2020年7月20日)

『老爺心お節介情報』第5号

『なぜ認知症のある人とうまくかかわれないのか?』石原哲郎著、中央法規、2000円

イギリスの故トム・キットウッド先生が提唱した「パーソン・センタード・ケア」の考え方を分かり易く解説してくれていますし、認知症に理解を深める二様が沢山書かれています。
私の「快・不快」を前提にした「求めと必要と合意」に基づく支援とも相通ずる考え方、実践が数多く紹介されています。
と同時に、マサチューセッツ工科大学のオットー・シャーマン博士の「U理論」や、スコットランドの「リンクワーカー制度」等が紹介されており、コミュニティソーシャルワークの考え方にも大いに参考になるものです。

(2020年7月20日記)

老爺心お節介情報/第4号(2020年7月14日)

「老爺心お節介情報」第4号

Ⅰ 令和元年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業

『介護ロボットの活用に向けた人材育成に関する調査研究事業』報告書
『介護ロボットを用いた介護サービスの質向上と業務効率化の指導――「介護ロボット・ICT使用コンサルテーション人財」のための教育ガイドラインーー』
社会福祉法人 善光会 令和2年3月
社会福祉施設に介護ロボットやリフト等の福祉機器をやみくもに導入しようとしてもうまくいかない。社会福祉施設自身が、業務の改善、品質向上への取り組みを行う中で、その課題に即した介護ロボットや福祉機器を導入した場合にはうまくいくということが事例を踏まえて書いてあります。

Ⅱ 『新版 隣保館運営の手引き』(全国隣保館連絡協議会発行、2018年9月)

同和地区、被差別部落と言われている地区において、コミュニティソーシャルワークへの関心と取り組みが始まっています。同和地区、被差別部落の地域改善の拠点になる隣保館の法的根拠や歴史、運営の指針等が良くまとめられています。、

Ⅲ 『高校福祉科』――資料の問い合わせ先 一般財団法人社会福祉研究所
「新学習指導要領に基づく福祉系高塔学校の教育実態に関する調査研究」、同ダイジェスト版

「福祉系高校を知る5つのポイント」
高校福祉科生徒の介護福祉士国家試験合格率87・8%/高校卒業後の就職先は、介護福祉現場が90・1%/就職者の地元就職率は90・3%/福祉・介護福祉・医療分野への就職定着率は82・7%/高校生の介護実習を受け入れた施設の86・2%が受け入れて良かったと回答。

※寸感(他人の土俵に乗って、相手の領域の問題で相撲を取れるように、意識して努力せよ)

救貧的な社会福祉制度に基づく支援を行っている際には、左程他の分野の動向に関心を寄せることなく、社会福祉制度に関わる政策をウオッチングしていれば、実践も研究も事足りた。この歴史が長かったので、今でも社会福祉学研究者、実践者の中には、社会福祉政策との関係だけで物事を考えている人が多い。
1980年代半ば、私は社会福祉研究者、実践家、社会教育研究者、実践家は“出されてきた政策には敏感であるが、政策が出されてくる背景には鈍感である”という指摘をしてきた。私は“出されてきた政策に敏感になるのは当然であるが、それ以上に出されてきた政策の背景に敏感でなければならない”と考えてきた。
しかし、いまや社会福祉は地域での自立生活支援を目的とするソーシャルワーク機能を展開する時代である。かつ、社会福祉政策も「地域共生社会」を創造するという社会哲学、社会システム、地域創生に関わる政策になってきている。
このような状況の中では、社会福祉学研究者、実践家はよほど関心と交流のウイングを広げないと時代に対応していくことができない。
私の恩師の小川利夫先生は、私に対し、視野狭窄、タコ壺論者と良く叱り、“他人の土俵に乗って相撲を取れるようにならなければ一人前とは言えない”といい、自分の土俵に相手を連れてくるのではなく、他人の土俵に乗って話ができるように、意識して広い他分野へ関心を持つ事を奨励した。私は、当時、自分の分野さえもカバーできないのに、他分野まではとてもと思いつつ、他人の話題に付いていこうと背伸びをしていた時期があった。
今の「地域共生社会」政策時代にあっては、地方自治論、地域経済論、都市計画論、社会システム論等の知見や研究動向も踏まえなければならない時代になってきている。
そのような中、“地域福祉”関係者は、必ずしも社会福祉施設関係者と連携、協働ができていたとは言えなかった。ここにきて、社会福祉法人の地域貢献の急速な展開の中で、社会福祉施設関係者と連携、協働が求められているが、“地域福祉”関係者はどれだけ社会福祉施設、施設を経営する社会福祉法人の状況を理解しているのであろうか。
社会福祉法人の地域貢献を声高に言うのではなく、施設法人が現在どのような課題に直面し、苦労しているのかを真摯に、謙虚に学びながら施設法人と社会福祉協議会、民生委員とが協働することが「地域共生社会」政策の具現化に繋がることになる。

(2020年7月14日記)

老爺心お節介情報/第3号(2020年6月29日)

「老爺心お節介情報」第3号

Ⅰ 一般財団法人長寿社会開発センター『生きがい研究』第26号(令和2年3月刊)

「独居高齢者の社会的孤立の課題と予防方略における精査の検討」
田高悦子(横浜市立大学病院医学研究科地域看護学分野教授)
「都営住宅における高齢者が感じる孤独死の不安と孤立化の現状に関する研究」
福島忍(目白大学人間学部人間福祉学科准教授)
「高齢者の社会関係と生きがいとの関連を改めて考える」
澤岡誌野(公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団)

高齢者の孤立の問題、一人暮らし高齢者の生活支援のあり方、介護予防等の施策が進められているが、どうみても縦割り行政である。地域福祉関係者はもっと市町村の社会教育の動向、保健分野の介護予防の動向に関心をよせ、出来れば一体的に取り組む可能性を探っていく必要がある。
私は、1985年に『高齢化と教育』(中央法規、室俊司共編)で、“高齢社会を共に生きる”ためには、教育、社会福祉、保健の横断的対応、世代交流を含めた対応の必要性を指摘したが、研究関心、実践動向はその当時より“縦割り”になっていないか。
また、1992年に「高齢者の生きがい対策に関する調査研究」(調査主査・千葉和夫日本社会事業大学教授)を行い、高齢者の生きがいと社会参加の重要性を論じている。
更には、1994年に東京都議会事務局の『調査資料77』の資料作りを担当し、かつ「高齢者の健康・生きがいづくりと地域自治体の役割」を執筆し、社会福祉の自立概念の再検討、「第3の人生」のライフ、福祉コミュニティの形成における高齢者の役割等について論述した。
1990年前後における“高齢社会対応策”に比し、今日、地域共生社会づくりといわれながら、地域福祉分野での論説は“視野が狭すぎる”のではないか。上記に挙げた文献の内容には必ずしも賛同しないし、評価もしないが、地域福祉関係者の視点を拡げておくためにもそれらの文献にも“目を通す”必要があるのではないだろうか。

(2020年6月29日記)

老爺心お節介情報/第2号(2020年6月2日)

「老爺心お節介情報」第2号

Ⅰ 新型コロナウイルスの件でも在住外国人の生活問題にも関心を寄せましょう

① 「外国人労働者の生活課題とソーシャルワーク」(『ソーシャルワーク研究』46-1、相川書房
② 「滞日外国人支援基礎力修得のためのガイドブック」公益社団法人日本社会福祉士会、2019年3月
③ 『多文化福祉コミュニティーー外国人の人権をめぐる新たな地域福祉の課題』 三本松政之、朝倉美江編著、誠信書房

(一読寸評)
『多文化福祉コミュニティーー外国人の人権をめぐる新たな地域福祉の課題』
本書を“一読”しての感想です。今後、読み込んだ後の評価は変わってくるかも知れませんが、取り敢えず本書を頂いたお礼として書かせて頂きます。

①「はしがき」に書かれている韓国の李先生の取り組みの中に、今日われわれが考えなければならない実践課題、理論課題があると思いました。
そのことが、後の章の中で必ずしも意識化されて書かれてないように受け止め、少し残念でした。
日本でも「移住者」に関しての法制上の問題、生活上の問題の“事象”については、それなりに研究が進んできたかと思いますが、その底流にある“社会的排除”の論理との関わりに関する理論研究が必ずしも深められていないと感じています。
② 平野隆之先生の論説である「主体」と「空間」を引用されていますが、私もそれは同じ考えです。ただ、私の地域福祉研究においては、それでは「主体」をどう形成するかを抜きにして“コミュニティ”づくりを語れないと考えてきたことです。
「移住者」の主体形成、生活支援(これはアメリカのハルハウスがイギリスのトインビーホールの考え方と違えたところです)をどういう形で展開するかです。イギリスのコミュニティソーシャルワークの定着化においても、これが大きな問題で、特にロンドンのケンジントン・チェルシー区のスペシャルパッチ(精神疾患の患者やエイズ患者の集積地と同時に「移住者」が集積した地区)の課題でもありました。
他方、「移住者」を受け入れる地域の“原住民”の意識と行動の変容問題です。日本のように稲作農耕文化による「共同」と「土着」がDNAに浸み込んでいる住民に働き掛け、“共に生きる”認識と行動への変容をどう作るかの問題です。
私の一つの仮設的実践は福祉教育による地域福祉の4つの主体形成をどう図るかでした。
この点の考察が殆どなかった点が残念です。この課題こそ、李先生の認識とも関わってくるのではないかと思いました。
③ 本書の編集で、「読書案内」、コラム等はとても参考になりますね。

Ⅱ 地域福祉計画策定や潜在化しているニーズへのアウトリーチを考える課題の一つが、単身障害者の把握とその支援のあり方です

① 「気分『感情』障害(躁うつ病を含む)の総患者数は、平成8年と度比べると、29年は男女とも約3倍増加している」
(『厚生の指標』2020年5月号、Vol.67 No、5 P51 図グラフのページ)
② 新型コロナウイルスの件に関わる申請者への支援等を考える際に、なぜその人の生活が脆弱なのかを、その人、家族のソーシャルサポートネットワークの脆弱性に着目することが重要である。そのために、インフォーマルケアのエコマップをどう描けるかの能力が問われる。

Ⅲ 「大橋謙策3度目の四国お遍路喜寿紀行」の前編分を送ります

写真付きで編集したのですが、容量が多すぎて、添付ファイルでは送れません。文章のみのを取り敢えず送ります。

(2020年6月2日記)

老爺心お節介情報/第1号(2020年5月28日)

「老爺心お節介情報」第1号

社会福祉協議会の関係者の皆様
地域福祉学会の関係者の皆様

皆さんお変わりなくお過ごしでしょうか。新型コロナウイルスの件では、未だ予断を許しませんが、呉々も留意の上頑張っていきましょう。

私は、この3月で東北福祉大学大学院を退職しました。少し、閑になるので、時々皆さんに一方的に、私が見て、読んで関心を持ち、皆さんと情報を共有しておいた方がいいと思われる情報を一方的に送ります。取捨選択して使って下さい。

ただし、大学教員を辞めるということは、教育・研究上迫られて情報を集めるとか、その立場にいるから自然と情報がはいってくるとかということが無くなり、皆さんが職務上知りえていること以上には情報を把握していないかも知れません。まさに、私が知りえたレベルでの情報を独善的に取捨選択して、「お節介爺さん」として送り届けるものです。そんな“お節介”は要らないという人は遠慮なく申し出て下さい。

① 高橋良太著「我が師を語るーー地域にある住民の福祉活動を掘り起こし、分析・整理し全国へ」
(雑誌『ソーシャルワーク研究』46-1、181号、相川書房)
# ルーテル学院大学名誉教授の和田敏明先生のことが書かれています。

② 山野良夫著「山里の拠点で、『引きこもり』、『ニート』の若者が地域活性化に向けて活動」
(全国社会福祉施設経営者協議会機関誌『経営協』2020年4月号

③ 『災害派遣福祉チームの育成に関する調査研究事業』2020年3月、富士通総研
# 令和元年度生活困窮者就労準備支援事業費等補助金・社会福祉推進事業。
## 今回の検討会には、全社協もきちんと参加しています。
### (株)富士通総研 国の医療・福祉分野の調査から検索できます。

(2020年5月28日記)

ほほえみがえし

よいことするってどんなこと

その子のかおがほころんで
「ありがとう」って いってくれたとき
きみもいいえがおで おかえしするよね
ほほえみがえしっていうんだ

わるいことするってどんなこと

ひとつ よけいなことをかってにしたとき
その子には してもらいたくなかったこと
「ごめんなさい」って すなおにあやまると
こまったかおがほころんで
きみもホッとして おかえしするよね
ほほえみがえしっていうんだ

ふたつ わざといじわるしたとき
その子には とてもかなしいことなんだ
「ごめんなさい」って すなおにあやまらなきゃ
でも すぐにはゆるしてくれないよ
ほんとにわるいとおもったら こころをこめよう
こころがつうじたら きっとゆるしてくれる
かおをみあって ニコってできたらなかなおり

みっつ わるいことだとわかってしたとき
その子には なにがなんだかわけがわからない
しまいには おこってしまうよね
しんじていた子に うらぎられたようなきぶん
きみなら すぐにゆるすかな
そんなきぶんになんか とてもなれないよね
ともだちなんかで いたくない

わるいとしって してしまった子に
かしこいきみは そのわけをきくかもしれない
その子には しんぱいごとがあって
だれにも そうだんすることもできずに
ひとりで すごくなやんでいたら
きみが とてもしあわせそうにみえてきた
うらやましく にくらしくて
やつあたりしてきたかもしれない
わるいことだとしりながらも
どうしようもなかったかもしれない

その子のさびしさやかなしさに
きづいてあげられたらどうだろう
もし ゆるしてあげられるのなら
その子は きっとすくわれる
きみのえがおが その子をすくう
その子のえがおが きみもすくう
ほほえみがえしって すてきでしょ

〔2021年3月12日書き下ろし。悪意の根にあるのは人間不信。寛容を拒否する社会に、微笑み返しは幻想か〕

遡上する鮭

犠牲となられた多くの御霊に哀悼の意を表します

報道された陸前高田の復興写真に見入った
冷たい海風は 防波堤を越え吹きすさぶ
十年の時を経てもなお 潮の香を運ぶ
奇跡の一本松は レプリカと化してなお風を受け立つ

3年前 山を崩し旧市街地にかさ上げの土を運んだ跡にいた
ニュータウンが造成され 小学校も開校した
山の上から眺望すると 川を越えた旧市街地は 
整備された道路が 区分けするように走っていた

復興のしるしに建てた 商業施設とその周辺だけは
街を形づくるが 賑わいにはほど遠かった
いまもなお 造成した6割近くが空き地だという
それでも 4割は戻ってきたのは事実だ

全国の地方のまちは 収縮を加速している
三千人のまちで 1年で百人近い年寄りが逝く
高齢化率の高い地域は 確実に多死時代を迎えている
最期を全うする静かな闘いが 日常となった

被災地の多くのまちで 帰郷を断念した人の無念が残された
災害前に戻すことは 叶わない夢想となっていった
でも 故郷の地で生き暮らすと頑張ってきた人たちがいる
まちづくりに必要なのは 若者・余所者・バカ者だという
いまその人たちがリーダーとなって まちづくりを引っ張る

復興のまちづくりのひとモデルこそ
これからの地方のあるべき姿となる
少子高齢化が進展する時代に 団塊の世代はその役目を終えてゆく
まちも国も縮んでゆくその過程の中で 
復興のまちづくりの担い手たちが挑む 熱い故郷づくりこそが
明日の地域や日本のあるべき姿を 指し示してくれるものと信じる

十年は 節目であり通過点にしか過ぎない
哀傷の念を抑えながらも 命の輝きと人のつながりの豊かさを学んだ
「負けないぞ!」 
その強い意思こそ 分かちあいたい
空き地の広さを論ずることよりも
人の心の空き地を 人の心で埋めてゆくことこそ
人が生きるに値する 故郷づくりとなるだろう
そんな余所者が 我が故郷で担うべき課題をいまも探る

震災の年の秋
大船渡の片田舎の漁村で見た
故郷に戻る小川を遡上する鮭の姿に
長い旅路の果てに死力を尽くして
次代を残すことに全力で挑む姿に
東北の被災地の復興に いまも果敢に取り組む
多くの人たちの姿が 重なって見えてきた

〔2021年3月9日書き下ろし。十年の間、被災地を三度訪問した。多くの方が語るなかで、何をか云わん。そう思いつつ書かざるを得なかった〕

福祉教育・ボランティア学習の理論化と体系化の課題

出所:福祉教育・ボランティア学習の理論化と体系化の課題/第2回大会・基調講演/日本福祉教育・ボランティア学習学会、1996年11月23日。
謝辞:転載許可を賜りました大橋謙策先生と日本福祉教育・ボランティア学習学会に衷心より厚くお礼申し上げます。

学会の新たなる10年に向けて

出所:学会の新たなる10年に向けて/第10回大会・総括講演/日本福祉教育・ボランティア学習学会、2004年11月28日。
謝辞:転載許可を賜りました大橋謙策先生と日本福祉教育・ボランティア学習学会に衷心より厚くお礼申し上げます。