阪野 貢 のすべての投稿

冤罪(えんざい)

罪なき者が 牢獄につながれていた

警察は自白を強要し それを証拠にでっち上げる
検察はその証拠を元に 殺人罪で起訴し求刑する
裁判官は 無罪の弁護を取り上げず 懲役刑を申し渡す
被害者家族は 殺人で公に断罪されたことに区切りをつける
被告は なぜそういうことになったのか理解できなかった
十二年間 自由を奪われ服役した
家族は 身を縮め息をひそめて世間に生きた

弁護団は 粘り強く再審を要求し続ける
無罪への信念とその闘いに 感服する
やり直し裁判で 警察が隠蔽してきた無罪の証拠が出てきた
裁判長は無罪を言い渡した
問われるべきは 捜査のあり方
思い込みによる自白の強要と 間違えても正さない不誠実と不正義
問われるべきは 裁判のあり方
検察の出した証拠を採用 有罪の判決後の再審請求への不作為
問われるべきは 世の中
警察も検察も そして裁判所も 法の下で正義を正していると信じ込み
刑事司法の冤罪(えんざい)は 万に一つもあり得ぬと暗示をかける

人間の成すことだからこそ 間違えることもありうると
これを許容することは 刑事司法では決して許されない
国家が権力を持って断罪することだからこそ 間違ってはならぬと
法の番人が自白の信憑性を検証せずして 有罪にすることは断じて許されない 
世間は冤罪が真実だからこそ 間違えを正さねばならぬと 
口汚く罵(ののし)ったことへの卑劣さは 自ら許してはならない  

冤罪を晴らした彼女はこう語る
「すごくうれしいです。すぐに控訴断念をしなかったのは検察の悪あがきで、
そういうことはしないでほしかった」
親は「普通の生活に戻してあげたい」と小さな思いを語る  
無関心であったことをお詫びしながら これからの人生に幸あれと祈りたい

決して謝ることのない メンツで生きる警察・検察関係者 
刑事事件は 勝敗を決めるレースではない
人間が人間を裁くことの 神聖な審判の場である
証拠に 一点の曇りもあってはならない
それを汚した者たちにより 
社会正義と検察への信頼が 大きく揺らぎ損なわれた
正義を求めてやまない検察官の心は 無残に折られていく
ただ 回復への道筋に 権力者が法を変え検察人事に干渉する
権力と私欲にまみれた者たちが 裁かれることなく
次の犠牲者を 冤罪の罠にかけ 嘲笑う声がする

この悪しき闇のサイクルを 一体誰が断絶するのか
立ち上がれ 法の正義の実現に生きる 真なる支え人よ

〔2020年4月4日書き下ろし。新型コロナ感染問題の渦中に冤罪が明らかにされた。見過ごされない裁判。心にとめながら、徹底した検証と結果の公開を願う〕

付記
「滋賀再審無罪 司法の改革につなげよ」
自白は違法な取り調べによって得られたもので、信用できない。そもそも病死の可能性があり、殺害行為があったということすら証明されていない――。
03年に滋賀県の病院で患者の人工呼吸器の管を故意に外したとして殺人の罪に問われ、懲役12年の判決を受け服役した元看護助手の西山美香さんのやり直し裁判で、大津地裁はそう指摘して無罪を言い渡した。
事件はまさに砂上の楼閣だったことになる。刑事司法に関わるすべての人が、一連の経緯から教訓をくみ取り、過ちを繰り返さないための対策を講じていかなければならない。
裁判では、まず患者の死因が争点になった。判決は、有罪の根拠とされた「管が外れたことによる酸素欠乏」との鑑定結果は、解剖所見や診療の経過、他の看護師の供述などに照らして疑問があると指摘。「管を外した」という西山さんの自白についても、内容がめまぐるしく変わっていて、警察官による誘導があったと結論づけた。
判決によれば、西山さんには軽度の知的障害と発達障害があり、話す相手に迎合する傾向があった。取り調べた警察官に恋愛感情を抱き、優しい言葉をかけられるなどするなかで、捜査当局が描くストーリーに沿う供述調書を何通も作成された。04年の逮捕から無罪までの年月を考えると、自白に頼る捜査の危うさと罪深さを痛感する。
しかし警察・検察はいまだに謝罪せず、再審公判でも自ら無罪を求めることはしなかった。捜査を断罪する判決が確定したいま、なぜこれほど長きにわたって西山さんを苦しめてしまったのか。徹底的に検証して、結果を公表すべきだ。
過去の冤罪(えんざい)と同じ問題が、この事件でも浮かびあがった。
一つは証拠隠しだ。警察は西山さんを逮捕する前に、「たんを詰まらせた自然死の可能性がある」旨を鑑定医が述べたという捜査報告書も作っていた。だがそれが検察に送られたのは、裁判のやり直しが決まった後の昨夏だった。再審でも争う構えだった検察は、急きょ新たな立証をしない方針に転じた。起訴の前、当初の裁判中、そして再審請求があった後……。もっと早い時点で開示されていれば、事態は違った展開を見せたのではないか。証拠の取り扱いや審理の進め方について明確な規定がない再審手続きの不備も、改めてあらわになった。
無罪を言い渡した後、裁判長は「問われるべきは捜査のあり方、裁判のあり方、刑事司法のあり方。関係者が自分のこととして考え、改善に結びつけていかねば」と述べた。これを言葉だけに終わらせてはならない。(朝日社説2020年4月4日)

現金支給

アベノマスクに 世界からの失笑止まらず
失態をチャラにするには
恥ずかしさをひた隠し 現金支給に突っ走る
それしか道は すでにない
ここでも狡(こす)くチャラい値切りをして 
大胆なと 思わせぶりをかまし続ける

算数のお勉強の時間です
大きな数は 小学4年で習うんだったかな?
第一問 準備はいいですか?
53000000×100000=5300000000000
ゼロばかり並んで読みにくいから、漢字表記にしましょう
5兆3千億になります
日本の世帯数約5300万世帯、当初1世帯当たり10万円の支給案が頓挫
そのときの現金支給予算が5兆3千億円というわけです

第二問
1000万世帯×30万円=3兆円
狡(こす)いの わかった?
当初は 全世帯に均等にと言いながら 5兆円の腹づもりをしていた
でも 支給対象を「一定の水準まで所得が減少した世帯」と条件つけて
約一千万世帯が対象になると想定した現金給付予算 総額3兆円なり 
差額2兆3千億円を 見事に値切り恩を売る
マスクの200億円の無駄金も こうしてチャラにするのが政治のやりくち
努々(ゆめゆめ)こんなトリックに騙されていては オレオレ詐欺は防げない

問題は いつもらえるのか?
7日に閣議決定後 いろいろ手続きいたしますといいながら
各省庁もコロナの影響もろに受け 手薄の関係部署はきっとない
突貫工事の制度設計は 上級公務員の腕の見せ所
それでも「一定の水準」とは どこにどう置くのか
年1千万円の所得があったものが 300万円になったので…
それだけもらっていて 預貯金がないとは考えられない
母子家庭で年収200万円でギリギリの生活でも生活保護は受けない母親…
それはもらえるの? もらえないの?
「一定の水準」というのは何なのか?
さじ加減一つで 生まれる不公平感は排除できない
基本月給五十万円が二十五万円の大幅減になり その証明書があればもらえるの?
月額二十万円もらっていた人が 十七万円になりました
たった三万円減っただけでも もらえるの?
給料明細もらえぬ人は 当たりません
だからって 風俗業は支援対象者外になるのか 納税者だよ!
納得できない線引きして より厳しい人たちを平気で捨てていくのです
ぐだぐだの不透明な支援策が 見切り発車でいま世に出ていく 

自治体の窓口の判断の違いで 支給の可否の違いがきっと出てくる
だから 不安や不満を訴える窓口も必要となる
自分の金でもないものを くれてやるという高飛車な態度で応じる輩もいる
そこに 従来のお役所仕事と役人の傲慢さが見え隠れすることは否めない

恥ずかしさを忍んで 相談に行く者たちの心に添う対応であってほしい
それでなくても 役所の敷居は高くて おいそれとは行けない場所
そこにお金をもらいに行くという 負い目と心苦しさを感じることのないよう
その身に添った対応を くれぐれも願いたい

自治体には この事務仕事 業務追加で人件費が補填され
そこではじめて 公務員は仕事する
自治体に1兆円のばら撒きも 人件費に喰われるのが落ちかもしれない 
地域の経済振興費は 雀の涙に変わることも否定できない

政府よ 余計なことは即断しても
肝心要の事には ずいぶんと無駄な時間をかけてきた
これからは 物流・販売と食料の生産や補給の課題も当然出てくる
その対策は マスク配布以上の緊急性をもって ことに当たってもらおう
その上で 正しい情報を伝えることが 重要な罹患防止対策ではないのか
社会不安で 銃の販売がアップしている米国との違いを明らかに示そう

今日も新たな感染者数が 1日最高の記録を更新中
政府よ 迅速に動け!
威勢のいいスローガンを叫んだ空言内閣に ようやく端緒が開けた
当初の予算を考えれば ケチらずにいまは惜しまず出すがよい
世帯構成によって 子どもの養育費支援は当然加算せよ! 
さらに 医療崩壊は 国家の重大危機であり
医療機関へは手厚い手立てを施し 絶対避けなければならない
国民のいのちと暮らしを護れぬような 大胆な方策なくば 
政府も政治家も その存在価値は無に等しい

〔2020年4月3日書き下ろし。子どもでもできる四則演算(加減乗除)で為政者の腹のづもりが見えてくる。やることすべてに狡猾さが鼻につく。もっと頭のいい人知恵貸してあげてよ。いまの官僚じゃ望み薄いか…〕

お恵みのマスク

為政者は 民の痛みへの最大の想像力を発揮した
為政者は いまそうすることが最善だと判断した
為政者は とても心優しい人間だった

五千万世帯に 2枚の洗える布マスクが恵まれる
1枚二百円 官房長官は記者会見で強調する
大判振る舞い 太っ腹の200億円 
コストはさらに増えてゆく
手間と時間と人件費 
1億枚のマスクが 五千万世帯に 配達される
梱包されて 住所が印字され 配達される
ただホームレスには あたらない 
日本の民ではないと 一線画す
為政者の思いつきの発想に いつも取り残される人がいる

為政者は 勘違いが売りの人間だった
為政者は 詭弁を弄することは 得意だった
為政者は なぜ笑われるのかは 全く理解できなかった

新型コロナウイルスによる 都市感染の緊急事態の最中に
それをおかしいと 声をあげてなだめすかす者すらいなかった
為政者もその取り巻きも 支配欲に冒されて すでに生活感覚はズレていた
彼らに 国の命運と民のいのちを委ねることは 危険極まりなかった
為政者は 独善者であり マスクこそ施しの証だった
民は 感謝して押し頂き傅(かしず)くよう求められたが
民はみな ひっくり返った
こんなピエロに 国を委ねたことを 笑わずにはいられなかった
国会議事堂は 綱渡りの合間にピエロの余興を楽しむサーカスとなっていた

計画性が欠如した無為無策を 唐突に押しつけられてはかなわない
二百億円以上の税金を 無駄にしないためには
地域の福祉施設に 病院に みんなで寄贈しませんか 
いのちを護る最前線で闘う人に思いを馳(は)せる 
共生共存のシンボル・マスクに変えてみませんか

今日の乾いた笑いが 明日の悲劇を生む前兆とならぬよう
為政者たちの審判のその日まで その言動に厳しい耳目を注ぎ続けたい 

〔2020年4月2日書き下ろし。無能な為政者がさもさもらしく良いことしてると強調する。国会議員よ、恥を知るべし〕

無情な数字

数字は語る
新コロナ感染者が 全国に拡散し
収束の見通しのつかぬまま その数だけが増え続ける

数字が踊る
世界の感染者数は 82万人突破
死亡者は4万人超
ネットを検索するたびに 数字が飛び込む

数字で煽る
米ホワイトハウスは 24万人が死亡する恐れがあると 警鐘を鳴らす
政治に疎く実業家あがりの 自己愛強いリーダーは
あたふたしながら 戦争だと騒ぎ立て
国民の不安を煽り あちこちで言葉の戦争おっぱじめる
東京も ここ1週間で事態は急激に悪化
いままで 死んだふりしていた知事さんも
オリンピック延期が決まった途端に
頻繁にメディアに露出しては 都市封鎖と煽り立て
感染地域を示すことなく 都民は強く不安を募らせる
夏の知事選意識した 強気のリーダーシップを演出する
その姿 パフォーマンスと非難されるも
海千山千の政治家の したたかさを知るだけに
言葉に説得力は すでに乏しい
知事選の対抗候補の擁立阻む
政治の駆け引きだけは お上手ですと言っておこう

数字を読む
この事態 ああだこうだとメディアは毎日垂れ流す
政府も 専門家会議を開いて意見を聴くと 神妙な姿勢見せつつも
誰がどんな専門家で どんな見識をもって語るのか
なにせこの事態 だれも体験したことのない未知なる世界
友だちごっこの安倍政権では 心許(こころもと)ない 
保健問題と経済(株価・雇用・消費)対策 そして教育問題
これを読み解き導くことが どんな専門家会議に委ねられるのか
いままでは 官僚の原稿をカタチばかりの協議で済ました 審議会や各種委員会
いつも集積されたデータは 政権に都合良く解釈されてきたことも心しておこう
いまは アベノミクスの成功など 誰も鵜呑みにして信じる者はいないだろう
きょうも巷では 専門家然とした人たちが 賑々しく論を垂れ流す

数字は数にあらず 
感染者や犠牲者の数に注目が集まるが
その一人ひとりの存在や暮らしのありようを
もっと意識されなければならない
千葉県の障がい者施設の集団感染は
危機的な状況であることは 想像に難くない
施設の感染ゾーンに入って 看護する人たちのその勇気ある行動こそ
いまを乗り越えるあるべき姿であることを 心に焼き付けよう
前線で頑張る人は 数字で表れた数以上の
いのちの闘いを 必死に続けていることを 心に刻もう
発症して死との恐怖と闘う人には カウントされた数以上に
その人に寄り添う家族がいることを 心にかけよう

数字に示せ
いまは威勢のいい言葉より 実現性の高い政策(数字)を求めている
経済支援5月にしますと 鷹揚(おうよう)に構えて顰蹙(ひんしゅく)を買う 
緊急事態へ立ち向かう気迫は感じず のっぺらぼうが君臨する
国民のいのちと暮らしを護ってこそ 政治である
政治家や公務員は その覚悟を示して 
心と身体に がっつり汗をかいてみようよ
  
犠牲になった方々の ご冥福をお祈ります
闘病を続ける方々の 一日も早い快復をお祈ります

頑張れ ニッポン! 

〔2020年4月1日書き下ろし。毎日数字だけがセンセーショナルに目に飛び込んでくる。己の麻痺しそうな感覚を諫める。東京都はようやく自治体毎の数字を公表した〕

約束の日~小学1年生を祝う

きみの足もとに広がる
かわいい 薄紫と黄色のクロッカスの花
空はどこまでも澄みわたり 遠方の雪深き山を望む

入学おめでとう
ピカピカの1年生
きみの小さな背中には
夢がつまった大きなランドセル

入学おめでとう
わくわくいっぱいの1年生
きみの凜々しいまなざしは
たくさんの好奇心に満ちみちている

入学おめでとう
げんげん元気な1年生
きみの明るい笑顔は
希望への光となり輝きを世に放つ

入学おめでとう
喜びあふれる 保護者の皆さん
この日を どれだけ切望していたことでしょう
ちょっぴり大人になった我が子とともに 
これから学び成長する子どもらにも
やわらかなまなざしとあたたかい手を
ちょこっと添えていただけませんか

紫色のクロッカスの花言葉は「愛の公開」
純真無垢な子どもらを
保護者も地域の人たちも
こころひとつにして 
いまこそ 護ってあげましょう

黄色のクロッカスの花言葉は「私を信じて」
感染の広がる新コロナウイルスが
子どものこころに 闇を広げることのないように
この日を 子どもを護る約束の日にしませんか

〔2020年4月1日書き下ろし。我が子も他人(ひと)の子も護る親心に気づかせるのが入学式です。子どもとの約束の日にしたいですね〕

笛吹けども踊らず:老人クラブ「100万人会員増強運動」―老人クラブ会則私案―

〇全国の老人クラブでは、2014(平成26)年度から2018(平成30)年度にかけて、「100万人会員増強運動」(「5カ年計画」)が展開された。2013年3月末現在の全国の老人クラブは11万487クラブ、会員数は648万8,740人、2019年3月末現在では9万5,823クラブ、524万5,723人である(厚生労働省調べ)。運動目標の750万人には程遠く、「笛吹けども踊らず」の結果に終わった。運動を主唱した全国老人クラブ連合会と都道府県・指定都市老人クラブ連合会は、その原因や背景についてどう捉えているのか。
〇単位老人クラブにまず求められるのは、組織自体の改革や新しい体制づくり、自治会・町内会や社会福祉協議会、公民館・コミュニティセンターなどの地域組織・団体との連携・共働のあり方、等について検討することであろう。そんなことを考えるなかで、本ブログの<雑感>(47)「“いまどきの年寄り”が『老人クラブ』に学ぶ―機能としての、もうひとつの福祉教育―」/2017年5月4日投稿、を読んだという読者から、老人クラブの会則(規約)に関する問い合わせをいただいた。
〇それに応えるために、<雑感>(47)の拙稿をベースにした「〇〇老人クラブ会則(私案)」を作成してみた。以下のそれは、規定が不十分であり、問題点があることは重々承知している。また、あくまでも私案であることを断っておきたい。

備考
「入会金」「会費」の納入を必要とする場合は、第2章第8条を削除し、第5章を次のように規定することになろうか。

参照
<雑感>(47)“いまどきの年寄り”が「老人クラブ」に学ぶ―機能としての、もうひとつの福祉教育―/2017年5月4日/本文

高等学校福祉教育方法・教材開発研究会「新学習指導要領に基づく福祉系高等学校の教育実態に関する調査研究」

(1)高等学校福祉教育方法・教材開発研究会「新学習指導要領に基づく福祉系高等学校の教育実態に関する調査研究」(ダイジェスト版/2020年3月)

(2)高等学校福祉教育方法・教材開発研究会「新学習指導要領に基づく福祉系高等学校の教育実態に関する調査研究」(完全版抜粋/2020年3月)

付記
本「報告書」をアップさせていただく際には、三重県立伊賀白鳳高等学校の鈴木幹治先生に格別のご指導とご高配を賜りました。記して感謝申し上げます。

首都封鎖

速報が流れた 昨夜タレントの志村けん氏(70歳)が亡くなった
同年の彼の死を悼むと共に その死が語る重大さをしっかりと受けとめたい
都民のそして国民の危機意識と 国の防疫体制が一層強化されることを願いたい

世界の177カ国・地域で 70万人を超えた
死者は約3万3千人を突破
各国がウイルス検査態勢を充実させる中 感染者が増えている
東京は 感染爆発の重大局面 その影響は甚大と
都知事にそう煽られながら 新型コロナの罹患者が増え続けている
今朝の日経ビジネスで 首都封鎖されたらどうなるか
「知っておくべき10」(記者島津 翔 他1名)として報告された
その概要をまとめながら この事態をふりかえる

(1) 都市封鎖(ロックダウン)って何?
都市封鎖(ロックダウン)とは、対象とするエリアの人の移動を制限したり企業活動を禁じることを指す。定義はあいまいで、都は諸外国で既に採用されている外出禁止などを想定して使用。中国・湖北省の武漢では1月23日から、空港や鉄道駅、高速道路などを閉鎖、都市を事実上封鎖した。
イタリア、スペイン、フランス、英国などは3月中旬から相次いで不要不急の外出を禁止。イタリアでは、生活必需品の購入さえ、1週間に1度程度に制限している。
米国も3月28日時点で、20以上の州が外出制限を実施。ニューヨーク州は22日から原則として州内の事業者の全従業員に対して出社を禁止し、完全在宅勤務を義務付けた。

世界中で、入国禁止を打ち出した。
日本は米国、中国、韓国の全土と、英国など欧州のほぼ全域からの外国人の入国を拒否する水際対策を大幅に強化する方針を固めた。外務省は今日にも、これらの地域の感染症危険情報を2番目に強い「レベル3」として、日本からの渡航中止を勧告する。昨日の道内の新規感染者は、欧州からの帰国者だった。
米大統領は29日、全国民に求めている行動制限を1ヶ月延ばし4月30日まで続けると発表した。事態を中国になすりつける愚弄を繰り返す金の亡者が、戦争だとリードして、選挙に勝つならどんな卑劣な手立ても厭わない。そんな男も経済の一部再開に向けて4月12日までに自粛要請の緩和を目指してきたが、「致死率が2週間以内にピークを迎える可能性がある」と、自身の目論見の甘さを露見した。アメリカの感染者は急増し、すでに12万人を超えている。イタリアは死亡者が1万人を超えてしまった。
アフリカなど医療機関の体制が不備な国に拡大する危険性が迫っている。東京が感染爆発の兆候を見せ始めているときに、来年のオリンピックの日程を決定し発表するも、世界から顰蹙(ひんしゅく)を買うことぐらいわからないのか、情けないとただ呆れてしまう。延期決定後の東京の感染者数の急激な増加も、政治的な思惑を疑われる始末である。

(2) 日本ではどんな根拠法に基づく? 従わなかったらどうなる?
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言によって、都道府県知事が外出自粛の「要請」、学校や福祉施設などの使用制限に関する「要請」や「指示」が可能になる。
内閣官房新型インフルエンザ等対策室によれば、特措法における「要請」とは、一定の行為について要請を受けた相手に対し好意的な処理を期待するものであり、その相手は要請を法的に履行すべき立場に立たされない。「指示」とは一定の行為を実施させることを指し、指示事項について相手に法的な履行義務が生じる。
指示に違反し、法で刑事罰が規定されているのは、必要な物資を確保するための都道府県知事からの命令に従わず、必要物資を隠匿、損壊、廃棄したケースなどに限られる。外出自粛や使用制限について特措法は罰則規定を置いていない。ただし、民事上の損害賠償の対象になる恐れがある。

独裁政治の国民統治の武器となる「緊急事態宣言」の使い勝手による危険性も、常に考え注視しなければならない。怖いのは法ではなく、それを執行する権力者である。

(3) どの施設がどう封鎖される?
特措法によれば、都道府県知事が使用制限を要請・指示できるのは、学校や社会福祉施設、興行場(映画や演劇、音楽、スポーツ、演芸などを公衆に提供する施設)。また、これらの施設におけるイベントやセミナーの制限についても要請・指示できる。さらに、都道府県知事は感染症の病原体に汚染された場所の交通を72時間以内に限って遮断できる。

要請による中止による文化活動に従事するフリーランサーや経営者の保証の道は、いまも断たれたままで放置されている。政府には補填する気はさらさらない。労働を守ると言葉だけがいつも空回りの内閣は、信用失墜を繰り返す。彼らの頭の中には、国民にどんなカタチの恩を売るのが最も効果的か、ソロバン勘定しかない。
不思議なこと。密閉・密集・密接の3条件が揃っているパチンコ業界から、感染者が店から出た話は聞こえてこない。放課後学童保育の現場からも聞こえてこない。全学休校措置は何だったのか? 

(4) 封鎖の期間はどれくらい?
政府は緊急事態宣言の発令による封鎖の期間について、21日程度とする方針を掲げ、これを目安に感染状況を踏まえながら、短縮や延長について検討する。
ただ各国は、軒並み封鎖期間の延長を迫られている。3月10日から全土を封鎖したイタリアは、当初商店の営業禁止については25日、外出禁止については4月3日までとしていたが、商店の営業も外出禁止も5月まで続けられる見通し。英国は3月23日から3週間としていた封鎖を、今後6カ月に渡り継続する可能性があると指摘。スペインやマレーシアも3月末までとしていた計画を、4月半ばまで延長すると発表した。
封鎖期間中も域内で感染拡大に歯止めがかからず、想定された抑制効果を発揮しない限りは延長を続けるほかはない。どれくらいの期間、封鎖を続ければ新型コロナを封じ込められるのか、その答えはまだ見えていない。封鎖を続ければ続けるほど、経済への影響や人々の不安は強まるが、感染収束の気配が見えない以上、各国とも現状では封鎖を続けざるを得なくなっている。

もしも東京のロックダウンが宣言されると、影響の甚大さは容易に想像できよう。
そんな世界情勢の中で、オリンピックを論ずる指導者の資質の劣化がさらに進んでいく。

(5) 食料の在庫はどうなる?
3月25日夜の会見で、小池知事が都民に対して週末の不要不急の外出自粛を求めると、その直後から都内のスーパーマーケットなどで買い占めが発生し、食料品棚の多くが空になる事態となった。
消費者庁など3省庁は翌26日、「食料品は十分な供給量を確保している。安心して、落ち着いた購買行動をお願いする」とするコメントを出した。(1)食料品は必要な分だけ買うようにする、(2)過度な買いだめや買い急ぎはしない、(3)転売目的の購入はしない、という3つの行動を呼びかける。農林水産省食料産業局は、即席めんについては「在庫は十分にある。現在、平時の2〜3割増の増産体制を敷いており、必要に応じてさらなる増産も可能だ」、冷凍食品については「流通からの発注は伸びているものの、在庫で十分に対応可能だ」など、各団体から在庫が十分であるとの回答を得たという。

群集心理が働くと、政府のコメントなんぞ簡単に無視される。セーブは効かなくなることは実証済みだ。それ以上に、政権との信頼関係が揺らいでいるいま、その言葉を鵜呑みにするほど、バカじゃない。そうさせた政府への抵抗は否定できない。
特に各国で外出規制の様子がニュースで流されている事態を見るにつけ、生活防衛のための行動をいま起こさなければ危ないという危機感は当然起こる。一方で感染爆発の重大局面だと煽られ、食品供給は大丈夫と言われても、買い物に行くことすら出来ず、スーパーが閉鎖されれば、一体どうなるのか。そこに大きな矛盾があることは誰もが知っている。買いだめを阻止できない事態が、ロックダウンではないのか。そこでも貧しき者は置いてきぼりになる。

(6) 東京が封鎖された場合、経済への打撃はどの程度?
野村総合研究所は3月26日、東京都がロックダウンされた場合の経済への影響についての概算を発表。仮に1カ月に渡って封鎖された場合、日本全体の個人消費を2.49兆円減少させ、日本の1年間のGDP(国内総生産)を0.44%押し下げると試算し、「1カ月のロックダウンであったとしても、それによって失われる需要は、東京五輪延期が2020年のGDPに与える影響を上回る計算だ」とした。
野村総研は、人の移動が厳しく制限される場合に最も顕著な影響が現れるのは個人消費だとし、ロックダウン下でも変わらずに消費される可能性が高い項目を抽出。食料・飲料(25.4%)、家賃(4.3%)、高熱・水道(7.4%)、医療サービス(2.6%)、通信(4.5%)の計44.2%は維持されるとして、残りの55.8%の大部分が一時的に支出されないと仮定して試算している。

あくまでも一般論であり、平均家庭の支出である。都民がどのようにその生計を維持するのか、55.8%が一時的に支出されないとすれば、その経済的なダメージは計り知れない。国が個人消費に向けて金をばらまいても、庶民は貯金するしかない。ばらまきと同時に、消費税をゼロにして、低所得層の暮らしを維持するとともに、国民の消費を促すことこそ「次元の異なる」経済対策となる。

(7) 全国の都市が封鎖される可能性はある?
爆発的な感染拡大が各地で始まったり、それが予見されたりする場合、封鎖される地域が広がる可能性はある。イタリアは3月8日に感染が集中している北部を封鎖したが、10日には全土封鎖に踏み切った。フィリピンも3月15日にマニラ首都圏を封鎖すると、その2日後にはマニラを含むルソン島全体を封鎖した。
米国では20以上の州が独自の判断で外出を規制する措置を取った。仮に東京都が封鎖に踏み切った場合、周辺の自治体が歩調を合わせて同様の封鎖に乗り出す可能性はあるだろう。26日には東京と神奈川、千葉、埼玉、山梨の1都4県が不要不急の外出を自粛するようにとの共同メッセージを発表。感染が拡大している地域に緊急事態宣言が出され、外出規制や娯楽施設の営業停止などが実施される可能性はありそうだ。
欧州ではイタリアを始め英国、フランス、スペインなどが、アジアではインドやマレーシアなどが全土封鎖に踏み切った。インドもイタリア同様に、当初は感染が発生した地区に限って封鎖を実施したが、数日後には封鎖範囲を全土に広げた。現状で日本がいきなり全土封鎖に踏み切るとは考えにくいが、感染の拡大に歯止めがかからず、一部地域を封鎖しても効果が限られるようであれば、封鎖範囲を広げざるを得なくなるだろう。
部分的な封鎖には弱点もある。タイでは首都バンコクの商業施設や娯楽施設を封鎖した結果、職を失った出稼ぎの地方出身者や外国人労働者が故郷を目指し大挙してバンコクを離れる動きが起きた。感染者が各地に散らばることを恐れた当局は住民に都内にとどまるよう要請したものの流れは止まらず、政府は非常事態宣言を出すことを迫られた。
封鎖が実施される前に多くの人々が脱出を図ろうと動き出したり、封鎖後も域内から出る人が続出すれば、感染拡大のリスクはかえって高まり、より強力な封鎖や全土封鎖が現実味を帯びる。

首都圏と通勤圏域も併せた封鎖は、現実のものになるかもしれない。タレント志村氏の死は、都民に衝撃を与えたであろう。なぜなら、彼は手厚い治療を受けても回復しなかったという事実を露わにしたからである。

(8) 親族が死去しても葬儀はできない?
イタリアのように、新型コロナウイルスのまん延を防止するために一切の葬儀を禁止している国もある。日本の現行法下では、都内全ての葬儀を禁止するのは難しい。「自粛ムード」は葬儀にも影響を及ぼし始めている。政府がイベントや集会の中止、規模縮小などを要請した後の3月1週目から、通夜と告別式を開かない「火葬式」の比率がそれ以前と比べて1割ほど上昇しているという。こうした状況を受けて、近親者のみで故人を見送った後、感染症の収束を待って2度目の葬儀を実施する「後葬」を始めた葬儀関連サービスも出てきている。

イタリアでスケートリンクに置かれた棺の映像が流れる。教会には収容しきれない棺が並ぶ。東日本大震災の時も、犠牲者の棺と火葬の場が不足した。死者はまだ少なくても、風聞で感染した家族が差別されることも、日本の悲しき現実だ。感染死した不遇の魂の安らぐところはあるのだろうか。

(9) 対面での受診なしで薬の処方箋はもらえる?
厚生労働省は2月29日までに、慢性疾患などの持病を持つ患者に対して、直接の受診ではなく電話での問診などでも処方箋を発行できる方針を各自治体に通知した。電話やタブレットなどの通信機器で医師が診察し、患者にそれまで処方していた治療薬を処方し、処方箋を患者が希望する薬局に送付する仕組みだ。ただし、新型コロナウイルスの感染が疑われる患者については、重症度の評価が困難であることなどから、医師との対面の診療を要請した。

養護老人ホームで、家族の面会や利用者の通院を制限したところ、今冬インフルエンザや風邪が全く流行しなかったという。東京でも病院や千葉県内の障がい者施設での院内感染が発生し、その対応に苦慮するところである。災害であれば医師も看護師も現地への派遣は可能であるが、感染者の入院治療するための態勢は、外部からの支援を受けにくい。勤務シフトも突然の学校休校措置で、医療現場で看護師が不足し、そのシフトに支障をきたしたことからも、重篤患者の人工肺設備の問題や軽症患者の対応など、現場任せにできない事態を考慮した指針を政府はしっかりと出さなけれならない。医療の崩壊は、従事者と表裏一体の関係にあることを、広く知るべきであろう。なんとしても医療者を支えなければならない。
障がい者施設も同様だ。外部からの支援をどのように行うのか。未知なる課題が次々に降りかかってくるが、今できる支援を迅速に判断し動くことが、行政の仕事でもある。行政にも頑張ってもらうほかない。

(10) 封鎖中の休業補償はどうなる?
現状で都市の封鎖に焦点を合わせた補償はなさそうだ。ただ新型コロナにより休業を強いられた企業や個人事業主に対する支援策は既にある。例えば国は経営が悪化した企業が雇用を維持できるようにする「雇用調整助成金」を拡充した。行政の要請を受けて事業所を閉鎖し、事業活動が縮小した事業主に助成金を支給、従業員の休業手当などに充てられる。また政府が3月10日に策定した緊急対応策第2弾では、新型コロナの影響で収入が減少した世帯や事業者に対する貸付制度や資金繰りを支える融資の保証制度などが用意された。さらに足元で検討が進む第3弾の対応策でも、休業せざるを得なくなった企業や個人事業主に対する支援策が盛り込まれそうだ。
日本でも封鎖を実施するとなれば、合わせてより強力な支援策を打ち出だすことを国や自治体は求められるだろう。ただ仮に支援が手厚くなったとしても、補償される範囲は一部にとどまる。売り上げの減少や損失の拡大は免れないだろう。

貸付は借金そのもの。その場しのぎの資金で、見通しの悪いいまを乗り切ることは、全く計算できない。だれもその答えを持たないだけに、借金は、真綿のように首を絞めることにならないのか、小規模事業者の苦悩の深さを感じる。
経済復興も、国内の生産ラインを維持する様々な物品の供給拠点が、世界中に散在している。そこで一時解雇や雇い止めが出ている現状を考えると、一国の問題ではないことが、今回の新型コロナウイルスの蔓延で、痛烈な経済ダメージとして表出した。

いまは耐えるしか道はないのか。

〔2020年3月30日書き下ろし。ここ数ヶ月の新型コロナウイルスによるダメージをまとめてみた。4月子どもたちが無事入学式や始業式を迎えてほしいと祈るばかりである〕

母の命日

母は 戦後大阪から 祖父に請われて海を渡り
予科練崩れの 父の元に嫁いだ
所帯を持たせば 落ち着くだろうという魂胆だった
誰一人知る人もない 室蘭の富士製鉄のベッドタウン幌別(現登別市)
八畳と四畳半の2間と台所の 狭い4軒長屋の労働者社宅
そこで 子どもを4人育てた

初めて授かった子は 流れた
慣れない環境と貧しい食事
ストレスと栄養不良だったのかもしれない
その後に 私が授かり 無事生まれた
もしも 最初の子が生まれていたなら
私は この世に存在しなかった
大人になって 存在は必然だったと考えるようになった

一枚の白黒写真が 手元にある
唯一残された 幼少の頃の写真
自宅前の 壊れかけた庭の竹の柵をバックに
真新しい三輪車 そのハンドルを小脇に抱え
坊ちゃんカットの頭に ベレー帽をかぶる 
KANGOLへの愛着は ここに原点があった
右に視線を向けて ポーズを取る
その先には あやす母の姿があったに違いない
真っ白い洒落た上下の服は 
上着に 縦2本のラインが入り 襟の縁取りにつながる
パンツは 半ズボン
白い靴下に 紐付きのシューズ
背丈から4歳前後の頃と 推察した 

大阪で生まれ育った母は お洒落だった
行くあてがない  余所行(よそゆ)きの服
社宅の子で こんな子ども服を着た子はいなかった
戦後の貧しい暮らしの中で 
父も母も 子どもらに注いだ深い慈しみに 
ただただ感謝のおもいしかない

若い母が 幼子(おさなご)の目線の先で 
満面の笑顔をふりまいている  
そう想像するだけで 目頭が熱くなった
30日 母の7回忌を迎える

※KANGOL:カンゴールは、イギリス発祥の帽子ブランド。そのロゴマークはカンガルーの付いたデザインが有名。特にハンチング帽が根強い人気を持っていて、40年前から愛用している。

〔2020年3月30日書き下ろし。一枚の写真に込められた父母の愛と、母を偲ぶ〕

シナリオ「稼いで半人前」

恩ある人に頼まれて引き受けた民生委員。何をどうしていいのかわからぬままに、不安ばかりが募ります。そんな様子を端から見ていた母親が、「どうしたのさ」と話しかけてきた。
食卓を囲んで、母と息子夫婦の3人で茶飲み話が始まったようです。

母 「どうしたのさ? 何だか言いたそうな顔さして」
息子 「どうもこうも、民生委員引き受けちゃって、勤(つと)まるかどうか」
母 「でも、引き受けてしまった以上、やるしかないっしょ」
息子 「母さんの手前、恩ある人だから、むげに断るわけにもいかず、引き受けちゃったけど」
母 「けど、何なのさ」
息子 「何をしていいんだか、さっぱりわからない。俺まだ40だよ。地域のことなんかより、仕事しなきゃ喰っていけないしょ」
嫁 「子どももまだ学校だしね。夫婦共稼ぎしないと、教育費もこれからかかることだしね」
母 「そうだね。でも引き受けた以上、やるしかないっしょ。決めたのはあんたなんだから」
息子 「それはそうなんだけど。でも時間がねえのもほんとのところで、仕事にどんだけ食い込むのか、そこが一番心配なんだ」
嫁 「だから、断れるもんならって、二人で話はしていたんだけどね」
息子 「でも、いままで頼み事なんぞしたことのないおじさんが、ああやって何度もうちさ来て、頭下げられたら、たまんないね」
母 「泣き言一つ言うこともなく、他人(ひと)様のために、長い間働いてきた人が、ああやってお前に頼みに来たって言うのは、ただ事じゃない気がするよ」
嫁 「私も、何か言えない事情があってのことかなって」
母 「元気そうに見えても、寄る年波には勝てないね。何か心配事が起こったのかも知れない。詮索(せんさく)してもしかたないけど」
息子 「そこなんだ。もしもだよ、例えば病気で動けなくなったから、助けてくれって頼みに来たら、頼まれた方は同情して“受けてやった”という気になるよね。ましてや恩義せがましく人にものを頼むのは、逆に負い目を感じて、おじさんには納得できないことだったかも知れない」
母 「父さんなら、そんな気持ちを察して、何も言わずに引き受けたかも知れないね。ほんとにおじさんにはお世話になって、口には出さんかったけど、お前が引き受けてくれて、実はホッとしたというのがほんとの気持ちさ」
嫁 「職場でこの話をしたら、恩を受けたらその人に返さず、世間に返して行くものだと教えてくれたわ。恩の貸し借りをその人としていたら、世間に恩は回らない。暮らしやすくする世間にするのは、そうして恩を世間に回すことが大事かも知れないって。その人は、50は過ぎているけれど、地域の消防団員で、じっちゃんたちと訓練してるって」
母 「さっき、仕事の話が出たけれど、父さんも仕事そっちのけでよく走り回っていたね。母さんが小言を言うと、よく言ってたわ。“仕事して半人前、他人(ひと)様のために動いて半人前。これでようやく一人前だ”って。うまい言い訳していたわ」
息子 「確かに、二人のいうとおりかもしれない。おじさんは、俺に一人前になれって、そう言いたかったのかも知れない。いままでどれだけいろんな人にお世話になってきたことか。子どもだって、学校だの少年団だの、親にはできないたくさんの恩を受けてきた。そう考えると、恩を世間に返してきたおじさんの気持ちを継ぐことが、俺たちのしなけりゃいけないことかもしれないね。子どもらがここで元気に成長していくためにも、大人の責任を果たすバトンを受け取ったのかもしれない」
嫁 「そうだね。確かに仕事もお金も大事だけれど、おじさんが、決して無理せず背伸びせず、できることからでいいんだよ、って言ってたでしょ。最初から大きな責任背負ったように思い込んでたから、気が重たくなったんじゃないの」
息子「できることから、か。そうだな。何もやってもいないのに、やれない、やらない言い訳を、考えていたのかも知れない」
嫁 「私もなんか負担だなと思っていたけど、何か手伝えることがあるかもしれないわね」
母 「そうだね。家族でこうして話ができるっていうのも、いいもんだね」
息子 「新しい民生委員の研修があるっていうから、まずは一から勉強します」
嫁 「そこが一番心配。なにせ物覚え悪いんだから」
母 「すみません。産んだ私の責任です」

親子の楽しそうな会話が続きます。
色々な事情を抱えてリタイヤする方の代わりに、新しく委員になられた方々にもそれぞれの事情があるものと思います。
それを抱えて今日この研修に参加したのは、何らかの自分なりに納得できる「引き受けた理由」を探しに来られた方も少なくありません。
これからの時間、その理由が見つかるかどうかわかりませんが、皆さんのお気持ちに添うような、あるいは生き方に添うような中身のある時間になるよう努めたいと思います。
皆さんのお力もお借りしながら、実りある時間になりますようよろしくお願いします。

〔2020年2月9日書き下ろし。昨日の「舞台を創る」で紹介したシナリオです〕