阪野 貢 のすべての投稿

舞台を創る

北見芸術文化ホールの舞台には
講演スタイルの設定で ステージ中央には大きな演台が置かれた
観客は 新任の民生委員児童委員162名
420名収容のホールは 半数も埋まっていなかった 

開始早々 突然3人が指名され 舞台に上げられた
導入は 寸劇から始まった
「稼いで半人前」 
初めて見るシナリオ
母と息子とその妻
民生委員を頼まれて 引き受けざるを得ない葛藤を
家族との会話の中で 浮き上がらせた
今日の研修は 不安を持って臨む委員の多くが
自分なりに 納得のいく理由を探しに来ていた
だから 息子と妻の不安は 共感をもって受けとめられた
見事に演じきった3人に 大きな拍手が起こった
会場の隙間は 観客の熱意で徐々に埋まっていく

詩の朗読も 参加者が次々と登壇する
ライトを浴びながら 臆することなく
初めて出会った詩を 優しく読み聞かせる
その初々しさに 拍手が一段と大きくなっていく

中央にあった大きな演台は いつの間にか舞台の隅に置かれた
舞台の中央には 参加者が堂々と座していた
時間の推移と共に 詩や寸劇に感情移入していく
舞台は 彼ら自身が創り上げていくステージへと 変化を遂げた

会場との一体化を目指した ワークショップの展開は
予想以上に 共感と好感をもって受け入れられた
そこは 彼らが創る学びの世界に変わっていった
自らの課題を 詩を通して明らかにしながら
今日までの迷いを払拭して 
明日からの活動に 頑張れそうという決意を こころに刻む

ワークショップは 成長する
当初の目論見を捨て 参加者の動きに身を任せる
周到な準備の上での予想だにしない展開が 自らの殻を打ち破る
劇場型の可能性の高さは 委員の主体的な参加によって実証されていく
「捨てることと創ること」の真意を 心ゆくまで味わい学んだ

〔2020年3月27日書き下ろし。臨機応変に場を学びの空気に満たすことへの醍醐味を味わう。参加者からの評価は、仕事への責任と意欲をさらに喚起する〕 

付記 
「捨てることと創ること」
昨年12月民生委員児童委員の改選期、道民児連が主催した新任委員研修会。
プログラムのワークショップを担って、3月新コロナ感染予防で3カ所が中止になるまで1月から2月まで道内11カ所を巡った。
アンケート調査を実施、1201人から回答が寄せられた。
第1次分析を、今日終えた。第2次分析は、クロス集計をかけて傾向を詳しく調べる。
新任の活動へのモチベーションを、高めるために、委員活動や支援を受ける住民のこころの有り様を詩に描いた。その詩を核にしたワークショップを展開した。
詩を朗読したり、その詩を材料にグループで話し合ったり、寸劇を演じたりと、2時間の時間はあっという間に過ぎた。
しかし、グループワークを中心とした展開は、会場の条件で頓挫する。参加者数によってグループワークのできるフラットな会場が確保できず、劇場型ホールでやるしかない。会場で、2タイプが生じた。
アンケート調査から面白いデータが、集計されていた。
全体の評価は、良かったが54%、良かったに近い41.8%、低評価は4.3%。
形態別で見ると、764人参加したフラットな会場では、良かった52.5%、良かったに近い43.2%、低評価は4.3%と、遜色なかった。
311人が参加した劇場型を見ると、低評価は4.2%と基本的に変化はしない。でも 良かった57.6% 、良かったに近い38.3%と、良かったが5%上昇する。グループワークを前提にしたワークショップは、ここで見事に覆された。
さらに2カ所で実施した劇場型を、比較してみた。300名収容の北斗市総合文化センター(渡島会場)は、149人のうち良かった51%、良かったに近い43% 、低評価6%。であった。420名収容の北見芸術文化ホール(オホーツク会場)は、162人にうち良かった63.6%、良かったに近い34%、低評価2.5%。良かっただけを較べると12.5%の差があったことに驚いた。
渡島では、初めて劇場型を展開した。できるだけ参加型の内容を工夫したが、そこにはレジュメの内容を充分に消化しきれず、展開にも会場との一体感にも今ひとつ不満を持った。
ただ他のフラットの会場でも、レジュメ通りの展開はしなかった。それは地域性を考慮しながら、インパクトのある身近な問題を提起する導入段階を、特にワークショップへの期待感を抱かせるような工夫を凝らして、レジュメ以外の資料を用意し、いつも臨んだ。
2月中旬、オホーツクは10カ所目になっていた。最初から会場との一体感を作らなければならないと覚悟した。それは、参加者主体の舞台をつくるプロデュースでもあった。数値に表れた64%の高い満足度は、この場にいた新任委員のモチベーションを確実に高める舞台となったことは、否定できない。
いままでの方法を捨て、共に新たに創ること、改めて仕事の面白さと怖さを味わった。
※道民児連:公益財団法人北海道民生委員児童委員連盟。公益財団法人は全国に2つしかない。
※2タイプの合計が1075人と、回答数1201人より少ないのは、無回答を排除した実数で分析したこと結果である。

意気地なし

男はみんな 弱虫で意気地なしだった

歯医者は 怖かった
座らされて 治療する歯科医に 
何をどうするのか いちいち尋ねた
納得して ようやく治療の手が入る
面倒くさい子だった 

いよいよ虫歯を抜くという日になった
母は 親父に付き添うよう命じた
参観日にも来ない親父が 付き添うなど想定外だった
治療台に座り 一言も言えず 泣くこともできず
うっと堪えて 静かに抜かれた
父は 黙って見ているだけだった
それが 心強かった
母は 子の弱虫を退治したくて
親父に委ねた
帰り道 痛くなかったべ
痛さを我慢しながら うんと返事をした
頑張ったなと その一言が一番嬉しかった
少年は 成長とともに 意気地なしを隠す術(すべ)を学んでいった 
男になった
痛くとも 痛くないと 自己暗示をかけ
見栄っ張りを通した
素直になれないところに 我慢強さを身につけた
親父のような男のイメージが いつも後押しした
「男は黙ってサッポロビール」のコマーシャルが好きだった

弱さを知るだけに 強く振る舞うことが 男の美学となる
意気地なしの根は いまも残り続ける
だから ときどき臆病さが顔を出し 身を縮ませる
理由もなく面白くて そのバランス感覚を楽しむ

ふと いまの野党の烏合の衆を見ていると
臆病者の悲哀を感じてならない
意気地なしが 強がって虚勢を張る
男の成長と重なった 原風景
違いは 隠すことなく見え見えで 痛々しい
父のような存在感を持つ者すらいない
 
野党が大同団結できぬなら 
バラバラに つまらぬ見栄を張って 勝手にするといい
チャンスに 戦略を描けぬ無能さに輪を掛けて
大事な時局に立ち向かう 気概を見せずして 
互いのちっぽけな意地を通して何になる
それが 意気地なしの正体だ
民に見放されたと 嘆き続けるのが お似合いだ

「男は黙ってサッポロビール」
与党は 野党をうまそうに飲み干す

〔2020年3月27日書き下ろし。この時期に統一会派の解消とは、何とも意気地なしの野党だと、あきれてものすら言いたくないから書いた。ビールはサッポロクラッシックがいい〕

正義を貫く

「相撲を愛し、力士として正義を全うし、一生懸命努力します」
立ち会い変化することなく 真っ向勝負のその愚直さは
相撲の醍醐味と 勝負に挑むひたむきさを 律儀に与えてくれる
朝乃山が 大関に昇進した
 
正義をもろに打ち出した この強さに圧倒された
不正を暴かれて隠蔽工作してきた政治の世界と 対極を成す
不正し者は 恥も外聞もなく その地位にへばりつく
時に任命権者は 責任は私にあるとそれだけで 事済ます
後はお好きなように叩かれなさいと 突き放す

民への不誠実は 誠実な者たちによって 守られる
民への不正義は 正義ずらして まかり通る  
子どもへの不道徳は 反面教師として学校で教えられていく

最大の国難は 
大した功績残せずに ズルズルといつまでも
罪過重ねるその者に 
突破と言われて 
玉砕するは ご勘弁願いたい

正義を貫く その一点突破こそが 
混迷した いまの世を救う

〔2020年3月25日書き下ろし。権力者が正義と発した途端言葉が腐る。朝乃山の口上はいまこのとき、誠実さと勇気を与えてくれた〕

水をさす

オリンピックが 1年延期になった
ウイルス蔓延の影響は 計り知れず
いまや東京が 感染ゾーンに陥る危険性を孕(はら)む
経済の落ち込みは 予想以上に冷え込んだ
最低賃金で働く者の仕事を 容赦なく奪う
終息後は 経済をV字成長させると いつもの威勢ばかりが空回り
世界の経済も日本の経済も だれも成長するなど 信じてはいない
大国に追従しただけの経済政策に 振り回されてきただけのこと
1年延期しただけで 当面の課題の解決は いかなるものか疑問が生じる

延期で直面する課題を 羅列する
(「五輪延期 これほど早く決まるとは」朝日新聞3月25日朝刊から引用)
予算 追加費用はいくらか 誰が負担するのか
会場 五輪33競技分の再確保と施設維持費が必要 先約がある施設もある
組織委 人件費増 オフィスの確保も必要だ
選手村 大会後にマンションに改修 引き渡しが遅れ補償の可能性もある
ボランティア 延期後も約11万人を集められるか
チケット パラリンピックを含めて約500万枚を販売 払い戻しはどうなるのか
宿泊先 組織委が仮押さえした4万6千室や一般客が予約した分の大量のキャンセルのでる可能性
警備 警備員1万人以上を再招集できるか 計画の見直しも
バス 確保した約2千台を再び集められるか
新型コロナウイルス 収束しているか不透明 

かつ テロへの警備強化も含め 水際対策を強化できるのか
さらに 病的な異変が起これば 医療機関の確保と対策はどうするのか
などなど 課題は見事に膨張し 国挙げての横断的な組織体制づくりが急務となる

そもそも 経済が1年で回復するなど 単なる希望的観測に過ぎない
現実を直視してこそ すべての課題は収斂(しゅうれん)し そこから始まる
オリンピック精神を蔑(ないがし)ろにしてきた 金権主義が報いを受けた
その代償は あまりに重い
すでに 都は準備の4年で 1兆3700億円をつぎ込んだ
延期でさらなる負担が追加され 財政圧迫は必然と 誰もが知るところとなる 

東日本大震災の復興祈念とアピールし 誘致を決める
復興も道半ばでの状況で すでに目的は瓦解(がかい)した
名目だけで 花道を邪魔されることなく飾りたい
そのおぞましい個人の執念だけで 延期を勝ち取る
東京は 夏の選挙戦に向けて 裏の準備は整った
多くの課題を背負い込む 都政の舵取り選び
迷走しっぱなし 散らかしっぱなしの指導者に 
都民は どんな評価をするのやら
都民も 先行き不安を募らせる

はっきりしていること
開催前 すでに経済は 失速していること
延期で さらに景気は 失速していくこと
開催後 景気は V字にならず低迷するだけのこと
三度の経済的ダメージを負うことだけは 想像できる
いまそのことが 一番怖い

国民は 一過性のオリンピックの熱などすぐ冷めて
財政危機により いまより貧しい暮らしを余儀なくされる
痛みと想像力を欠いた指導者の 審判の日は決して遠くはない

〔2020年3月25日書き下ろし。昨夜延期が決まった。花道に首の皮一枚つながっただけのこと〕

遺書に名前があるか?

23日参議院予算委員会
安倍首相と麻生財務大臣
再調査するかを問われ すでに適切に処理されている
再調査はしないと答弁
さらに 赤木俊夫氏の遺書に私の名前があるかと
書かれていなければ 経緯がいかなるものであっても
私に責任はないと 首相は開き直る
野党の追及 新事実が出てきても 不甲斐ない感情論
準備不足で いつもの堂々巡り 成果なし

赤木氏の妻は コメントで訴える
「すごく残念で、悲しく、また、怒りに震えています。
夫の遺志が完全にないがしろにされていることが許せません。
もし夫が生きていたら、悔しくて泣いていると思います。
…二人は調査される側で、再調査しないと発言する立場ではない」

財務省で調査し 報告されているのが全て
関係者は 規則に則り処分後
適材適所で 要職に異動したのは問題なし
功労に報いる あからさまな人事は 
この強権内閣の 愚の骨頂を極める
喜んで拝命うける上級官僚 仁なくして誇りなし
続く下級官僚 出世競争の必勝法を学び続ける
近畿財務局で 共に隠蔽工作を指示され作業した者たちは
同僚を亡くすも 真実の声あげず 沈黙する
赤木氏の妻の憤怒と勇気ある行動に 声を出してほしい     

安倍首相と麻生大臣の
手前味噌の調査で よしとするその口に
二人こそ 調査される側の人間であると
妻は見事に 核心を突く 
だからこそ 隠し通すことに執着し 
二年経っても 人を食った答弁を繰り返す
野党も 低い調査能力で 追求不発の繰り返し
オリンピックが延期されれば 政局となる
だからいまが 野党の踏ん張りどころ
バラバラの思惑がからみ カタチばかり連携は
すでに見透かされていることを 肝に銘じて覚悟を示せ 

冷酷非情の政治の世界に 妻は果敢に闘いを挑む
思想的に傾倒した者や 内閣の熱烈な信奉者 
そして 罵倒中傷することに快感を覚える 心歪んだ匿名者
この世の憎悪が 一人の女性に集まることが 危惧される
ただただ身辺の安全を 護ってほしい
心ない非難と暴力を阻止できぬ国家は その誹(そし)りを免れない
権力者よ そうならぬよう心してほしい
民は 騙されぬよう 耳目を属す
 
※耳目を嘱す:耳をそばだて目を注いで見聞する。

〔2020年3月23日書き下ろし。正義の者が身の危険を感じる祖国は、なんと浅ましい国なのだろうかと、そうならぬ事を願う〕

「関係人口」とまちづくり―その概念に関するメモ―

● 「定住」しないのならあれこれいう資格はないよ、当然でしょ!
● しょせん「よそ者」は「よそ者」ですよ、そうじゃないですか!
● 火事と葬儀には手を貸すという「村八分」(の二分)さえも残っていないんだよ!
● 「ないものねだり」ではなく「あるもの探し」って言われるんだけどね!

〇国土交通省(国土政策局総合計画課)が、2019年9月、「関係人口」の実態を把握するため、三大都市圏(首都圏、中部圏、近畿圏)に居住する18歳以上の人を対象に、インターネットによる「地域との関わりについてのアンケート」調査を実施した(有効回答数:28,466人)。その結果、調査対象地域の18歳以上の居住者(約4,678万人)のうち、約1,080万人、23.2%が「関係人口(訪問系)」として、日常生活圏、通勤圏等以外の特定の地域を訪問していることが分かった。「関係人口(訪問系)」とは、日常生活圏、通勤圏、業務上の支社・営業所訪問等以外に定期的・継続的に関わりがある地域があり、かつ訪問している人(地縁・血縁先の訪問〈帰省を含む〉を主な目的としている人を除く)をいう。
〇「関係人口(訪問系)」の結果の内訳は、地縁・血縁先以外の地域で飲食や趣味活動等を行う「趣味・消費型」が約489万人、10.5%。地域の人との交流やイベント、体験プログラム等に参加する「参加・交流型」が約272万人、5.8%。地域においてテレワークや副業を実施したり、地元企業等における労働や農林水産業に従事する「就労型」が約181万人、3.9%。地域産業の創出や地域づくりプロジェクトの企画・運営、協力、地域づくり・ボランティア活動への参加等を行う「直接寄与型」が約141万人、3.0%、となっている(以上、2020年2月18日付ブレスリリースから抜粋/国土交通省ホームページより)。
〇いま、こうした地方や地域(農山村)との多様な関わりの現状や動向をどう捉えるか、が問われている。そのまえに、まだ認知度が高い言葉ではない「関係人口」とは、そもそも何か。本稿では、この基本的な問いに答えるための資料を以下に紹介し、それぞれの言説をメモっておくことにする。

(1)高橋博之『都市と地方をかきまぜる―「食べる通信」の奇跡―』(光文社新書)光文社、2016年8月
地方自治体は、いずこも人口減少に歯止めをかけるのにやっきだが、相変わらず観光か定住促進しか言わない。しかし観光は一過性で地域の底力にはつながらないし、定住はハードルが高い。私はその間を狙えと常々言っている。観光でも定住でもなく、「逆参勤交代」で地方を定期的に訪ねるというニーズは、広がる一方だと思う。交流人口と定住人口の間に眠る「関係人口」を掘り起こすのだ。
日本人自体がどんどん減っていくのだから、定住人口を劇的に増やすのは至難の業だ。しかし関係人口なら増やすことができる。私の周辺の都市住民たちには、移住は無理だけれど、こういうライフスタイルならできるという人間がとても多い。現実的な選択肢だ。関係性が生み出す力をいかに地域に引き込むか、である。(107~108ページ)

〇高橋博之(たかはし・ひろゆき)にあっては、「関係人口」とは「交流人口と定住人口の間」であり、その具体的な関わり方は都市住民が地方を定期的に訪ねる「逆参勤交代」である。それは、「都市と地方をかきまぜる回路」「都市と地方がつながる回路」(108ページ)である。さらに、「関係人口」は、生産者と消費者を「かきまぜ」、「共感と参加」を産み、「生きる喜びや生きる実感、生きる意味といった『生』への手応えを感じる」(174ページ)ことに通じる(「生活者」)。

(2)指出一正『ぼくらは地方で幸せを見つける―ソトコト流ローカル再生論―』(ポプラ新書)ポプラ社、2016年12月
地方を元気にする方法として、これまでは移住者が増えて人口増を目指すことか、観光客がたくさん訪れることによって経済効果が上がるかのどちらかが主流でした。しかし、日本はこれからどんどん人口が減り、東京ですら2020年には人口減に転じると予測されているなか、このふたつの方法で人を集めることはどの地域でも難しくなっています。地方の課題は、人口減に歯止めをかけることではない。そこにいち早く気づいた地域が、真っ先に取り組んでいるのが「関係人口」を増やすことです。
地域経済の活性化戦略のひとつに、「定住人口」「交流人口」というキーワードがあります。その地域に住んでいる人を「定住人口」と呼ぶのに対して、地域外から旅行や短期滞在で訪れる人のことを「交流人口」といいます。これまでは、このふたつのどちらに政策の重きを置くかということが行政の視点でした。ところが最近、どちらにも当てはまらない新しい人口が生まれています。「関係人口」といわれるものです。
関係人口とは、言葉のとおり「地域に関わってくれる人口」のこと。自分のお気に入りの地域に週末ごとに通ってくれたり、頻繁に通わなくても何らかの形でその地域を応援してくれるような人たち。いくつかの地域ではそうした関係人口が目に見えて増えており、そこでは中心となる人が地域づくりを始めるようになりました。(中略)「交流人口」と違い、積極的に地域の人たちと関わり、その社会的な足跡や効果を「見える化」しているのが、「関係人口」といえるでしょう。(218~220ページ)

〇指出一正(さしで・かずまさ)にあっては、「関係人口」とは「地域に関わってくれる人口」であり、「交流人口」との違いは関与の度合いによる。まちづくりは、「この人が自分の地域に関わってくれたら、よい方向に動き出すに違いないと思える存在。そんな熱意のある人(「ローカルヒーロー」)がひとりでも増えること」(223ページ)による。関係人口の主要な担い手である若者が求めるのは「関わりしろ」、つまり「その地域に自分が関わる余白があるかどうか」(33~34ページ)である。まちづくりのゴールは「移住」者や「観光」客の増加ではない。

(3)小田切徳美「『農村関係人口』の可能性」『日本農業新聞』2017年6月
現在では移住ばかりが注目されているが、つぶさに実態を見れば、人々の農村への関わりは段階的である。例えば①地域の特産品購入 → ②地域への寄付 → ③頻繁な訪問(リピーター)→ ④地域でのボランティア活動 → ⑤準定住(年間のうち一定期間住む、二地域居住)→ ⑥移住・定住――という、いわば「関わりの階段」があることを以前指摘した。この状況をある一時点で切り取れば、人々の農村への関係は「無関心―移住」という両極端ばかりではなく、濃淡が生じることになる。

このことから、実は次のことが導かれる。第一に、多様な階段を想定し、準備することが政策の役割の一つとなる。先に示した6段階は一例であり、もっと段階は多く、そしてバリエーションもあろう。最近ではよく見られる「お試し移住」などは、新たにつくられた階段である。第二に、移住促進政策とは、下の段から上の段に上る一歩を支えることの積み重ねであり、それだけきめ細かい対応が必要になる。例えば、特産品を購入した人に対して、地域のためのクラウド・ファンディング(インターネットを通じて不特定多数の人から資金を調達すること)やふるさと納税の案内をするのは、有効な手段となろう。
つまり、移住の促進のためには、この関係人口の裾野を広げることが重要であると分かる。それを上のように図式化した。しかし、この図から逆に、関係人口論にはさらに一歩進んだ、新しい要素があることも分かる。それは、関係人口論はこの「関わりの階段」を登るのに必ずしもこだわっていないことである。階段の同じ位置にとどまる人も含めて、関係人口であり、それを尊重する議論といえる。
また、階段から外れている関係人口も生まれている(図中上部に記載)。それはローカルジャーナリストの田中輝美氏らが明らかにした「風の人」である(『よそ者と創る新しい農山村』)。特定の農村に強い思いを持ちながらも、あえてその地域に定住しないライフスタイルを選ぶ若者群の存在が指摘されている。地域外から交流のコーディネートをする人もいる。(「『農村関係人口』の可能性」『日本農業新聞』2017年6月4日付より一部抜粋)

〇小田切徳美(おだぎり・とくみ)にあっては、「(農村)関係人口」とは「農村に対して多様な関心を持ち、多様に関わる人々の総称」である。人々の農村との関係については、①「無関心―移住」という両極端ばかりではなく、濃淡(「階段」)がある。②「関わりの階段」を登ることに必ずしもこだわるものではない。③階段の同じ位置にとどまる人や、階段から外れている人もいる。④関わりが多様であるがゆえに、集団としてではなく、個人的な対応が求められる。

(4)田中輝美『関係人口をつくる―定住でも交流でもないローカルイノベーション―』木楽舎、2017年10月
関係人口こそが、本格的な人口減少時代を迎えた日本社会=縮小ニッポンを救う新しい考え方であり、地方の新しい戦略になりうる。(中略)関係人口という考え方が広まることで、社会がより良くなる。
これまでは、地域を元気にするためには、その地域に住む「定住人口」を増やすか、短期的に訪れる「交流人口」を増やすか、ということが大事だとされてきました。最近は特に、定住人口を増やす競争が盛んになっています。
しかし、日本全体の人口が減る中で、地域間で定住人口の奪い合いをしていても、疲弊するだけだと思いませんか? どこかが増えれば、どこかが減るのです。(6~7ページ)
たとえ住んでいなくても、地域を元気にしたいと思って実際に地域を応援し、関わる仲間が増えれば、地域は元気になる。(7ページ)

〇田中輝美(たなか・てるみ)にあっては、「関係人口」とは「地域に多様に関わる人々=仲間」(8ページ)のことである。「関係人口」の最終的なゴールは、「離れていても、関係を持ち、役に立ってもらえばそれでいい。仲間でいること」である。そこに「移住」や「定住」の価値を持ち込むことは、「関係人口自体を否定する」(242ページ)ことにもなりかねない。「関係人口であり続けた結果、関わりのグラデーション(段階的な変化)が深くなり、移住という次の段階に進むということは当然あり得る。それでも、あくまでも移住、定住は、ゴールではなく、結果の一つ」(243ページ)なのである。
〇「関係人口」というこの新しいあり方は、「交流や定住というこれまでの考え方をバージョンアップさせた、よそ者と農山村の『共創』と名付けてもよい」。「多様なよそ者と関わりながら、ともに地域課題の解決へのチャレンジを続ける。これこそが、人口減少という新しい時代を迎えた中での目指すべき農山村の姿であり、その先に再生という結果が見えてくる」(田中輝美著・小田切徳美監修『よそ者と創る新しい農山村』〈JC総研ブックレット〉筑波書房、2017年3月、55、56ページ)。

(5)総務省『これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会報告書―「関係人口」の創出に向けて―』2018年1月
都市部には、特定の地域を「ふるさと」として想いを寄せ、地域外から「ふるさと」を支える主体となりうる人材が相当数存在している。
こうした地域外の人材を「ふるさと」との関わりで分類すると、まず、その地域にルーツがある者として、近隣の市町村に居住する「近居の者」と遠隔の市町村に居住する「遠居の者」が存在する。また、ルーツがない者としては、過去にその地域での勤務や居住、滞在の経験等を持つ「何らかの関わりがある者」のほか、ビジネスや余暇活動、地域ボランティア等をきっかけにその地域と行き来するいわば「風の人」が存在する。
これらの地域外の人材と「ふるさと」との多様な関わりを踏まえると、必ずしも移住・定住のみを目標とするのではなく、地域内外の人材が「ふるさと」との複層的なネットワークを形成することにより、地域づくりに継続的に貢献できるような環境を整えることも重要となっている。(10ページ)

〇総務省は、2016年11月に「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」(座長:小田切徳美)を設置し、2018年1月、議論の成果を『報告書』として公表した。『報告書』では、「関係人口」とは「長期的な『定住人口』でも短期的な『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者」(1ページ)をいう。そして、「地域外の人材による資金や知恵、労力の提供は、地域内の内発的エネルギーと結びつきやすく、ここに地域再生の糸口がある。移住・交流、「ふるさと」との関わりの深化を推進し、地域内外の連携によって自立的で継続的な地域づくりを実現することが重要である」(19ページ)、とする。ここでのキーワードのひとつが、「ふるさと」である。そのうえで、今後の方向性(政策化)について、次の3点を指摘する。①段階的な移住・交流を支援する(移住・定住希望者の段階的なニーズに対応した施策の検討)、②「ふるさと」への想いを受け止める(人々と「ふるさと」とのより深い関わりを継続的に築く新たな仕組みの検討)、③地域における環境を整える(移住・交流、「ふるさと」との関わりの深化を図る取り組みをコーディネート・プロデュースする中間支援機能の育成と、その役割を担う人材育成の支援の検討)、がそれである。

 
〇「関係人口」という言葉を最初に使ったのは、前述の高橋博之であるとされる。そして、「関係人口」を国レベルで初めて位置づけたのは、前述の総務省の『報告書』である。しかも最近では、「関係人口」の創出・拡大が「地方創生」の主要な柱のひとつに位置づけられている。直近では、政府(内閣府)は、2019年12月、第2期(2020年度~2024年度)の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、「関係人口」の創出・拡大を図るために、個人や企業と地方との関係を深める取り組みを関係省庁が連携して推進することを求めている。留意しておきたい。
〇周知のように、2014年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」「まち・ひと・しごと創生総合戦略」によって、「地方創生」政策・事業が具体的に始まった。そのねらいは、「人口減少の克服」と「地域経済の活性化」にあり、それが政府主導で、すなわち中央集権的・上意下達的に推し進められてきた。しかも、その政策・事業内容は、人口政策に比して、経済・産業政策が重視されている(偏向してきている)。その結果、予定調和的に、「雇用の創出」や「人口の獲得」の地方・地域間競争が激化し、人口の東京一極集中や地方の人口減少を阻止することはできないでいる。
〇「関係人口」は、経済・産業の振興だけを促すためのものではない。単に「数・量」を追求したり、特定の「地域・地区」を評価するものでもない。際立った「ローカルヒーロー」(指出)はいずれいなくなり、必要とされなくなる。ヒーローの地元住民化、地元住民のヒーロー化とでも言えようか。
〇「関係人口」は、地域と住民の「個性の尊重」「多様性の共生」を基本理念とする、「仲間づくり」「関係性(つながり)づくり」を進める。しかも、主体的・自律的な地方・地域・住民主導(ボトムアップ型)の、内発的な「まちづくり」に取り組む。従ってそれは、じっくりと時間をかけて、みんなで学びあい・支えあい・楽しみあいながら、地域の、豊かで快適な未来(あす)を拓くのである。
〇「まちづくり」の担い手は、内発的な動きが期待されるその地域に定住する住民だけではなく、その地域や住民などと継続的に多様な関わりを持つ「関係人口」もその担い手として捉えることが肝要である。そこに求められるのは、都市と地方や新・旧住民がつながる、あるいは混住する多様な住民の・住民による・住民のための「リーダーシップ」と「共働」、そして「社会変革」である。

補遺
小田切徳美「『農村関係人口』の可能性」『日本農業新聞』2017年6月4日付

反応と反動

森友学園を巡る公文書改ざんに
関与させられて追い詰められ心を病み 
2018年3月7日 自ら命を絶った
赤木俊夫氏の「手記」が明らかになった

疾病に基づく 発作的・衝動的な自死ではない
冷静な意識を 最期まで保ったままの覚悟の死
「憤死」と呼ぶしかない 凄まじい最期だった
そう論じる者もいる

麻生財務大臣の反応は
手記を見ることもなく 平然と再調査を拒否する
関係した閣僚たちは さしたる処罰も受けず出世する
隠しおおせたと思った一件が 暴露され
訴訟という手段で 法的に解明の道筋をつけた
不起訴と無罪放免した 忖度の疑惑の晴れぬ検察は
暴き出される事実を 誠実に検証できるのか
職務遂行が 正しく求められてこそ 法の番人となる

国民の奉仕者という上級公務員にこそ 求められる真摯さは
顧(かえり)みられることもなく 内閣の奉仕者にとその身を落とし 
財務省とトップ官僚自らが 民主主義を欺き 黒い歴史を刻んだ
内実の知る議員たちは 関係者は処分したから
この事案 力で押し切るしかない
臭いものにはすぐフタをして やり過ごしたいと
かかる火の粉を振り払い 選挙に向けた本音をもらす

政治は 力のバランス
一方に忖度して 偏った官僚政治は
いつの世も 元に戻ろうとする揺り戻しの反動に
抗(あらが)うことは許されず 自壊する
真実は 一方にだけ語られるものではない
法の前に 明らかにされてはじめて真実となる
国民の奉仕者を 二度殺めてはならない

〔2020年3月22日書き下ろし。赤木俊夫氏の奥様の英断に感謝したい。悪政が続く限り、誠実に生きた公務員の声を押し殺すことは、二度殺めることになることを肝に銘じたい〕

付記
学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却と財務省の公文書改ざん問題で、自殺した財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(当時54)の手記全文の一部を引用します。
「4. 決裁文書の修正(差し替え)」
本年3月2日の朝日新聞の報道、その後本日(3月7日現在)国会を空転させている決裁文書の調書の差し替えは事実です。元は、すべて、佐川理財局長の指示です。
局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。
佐川理財局長の指示を受けた、財務本省理財局幹部、補佐が過剰に修正箇所を決め、補佐の修正した文書を近畿局で差し替えしました。
第一回目は昨年2月26日(日)のことです。当日15時30分頃、出勤していた統括官から本省の指示の作業が多いので、手伝って欲しいとの連絡を受け、役所に出勤(16時30分頃登庁)するよう指示がありました。その後の3月7日頃にも、修正作業の指示が複数回あり現場として私はこれに相当抵抗しました。
管財部長に報告し、当初は応じるなとの指示でしたが、本省理財局中村総務課長をはじめ田村国有財産審理室長などから管財部長に直接電話があり、応じることはやむを得ないとし、美並近畿財務局長に報告したと承知しています。美並局長は、本件に関して全責任を負うとの発言があったと管財部長から聞きました。管財部長以外にも、●●管財部次長、●●次長の管財部幹部はこの事実をすべて知っています。
本省からの出向組の●●次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省の補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。(大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています)
これが財務官僚機構の実態なのです。パワハラで有名な佐川局長の指示には誰も背けないのです。佐川局長は、修正する箇所を事細かく指示したのかどうかはわかりませんが、補佐などが過剰反応して、修正範囲をどんどん拡大し、修正した回数は3回ないし4回程度と認識しています。役所の中の役所と言われる財務省でこんなことがぬけぬけと行われる。
森友事案はすべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応すべて本省の指示(無責任体質の組織)と本省による対応が社会問題を引き起こし、嘘に嘘を塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こしたのです。
この事案は当初から筋の悪い事案として、本省が当初から鴻池議員などの陳情を受け止めることから端を発し、本省主導の事案で、課長クラスの幹部レベルで議員等からの要望に応じたことが問題の発端です。いずれにしても、本省がすべて責任を負うべき事案ですが、最後は逃げて、近畿財務局の責任とするのでしょう。怖い無責任な組織です。
○刑事罰、懲戒処分を受けるべき者
佐川理財局長、当時の理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部担当窓口の補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員)
この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。
今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55才の春を迎えることができない儚さと怖さ)家族(もっとも大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何? 兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。
さようなら。(朝日新聞2020年3月18日)

聴覚の不思議さ

人は 不思議な音のセンサーをもつ
人は 必要な音だけを感知する
人は 何かに集中すると 音は消される

耳から入る情報を 瞬時に分析し 
要不要を選別し 不要なものは捨てる
その判断は 自己完結する
誤ったときには 生命の危険にも晒される
誤らないという保証は 何もない

まずは 聞き取る
聞き逃してはならぬかどうか 耳を傾ける
聞き間違うことのないよう 時には聞き返す
肝心なことは 聞き漏らさぬようにする
どうでもいいことは 聞き流す
誹(そし)りや卑(いや)しめには 聞く耳を持たない

男は 聞き心地がいい話だけに 耳をそばだてた 
男は 耳障りの悪い不快な事には 耳を塞いだ
男は 都合の悪いことには 耳に栓をした
男は 時に聞く耳をもたず 独断した
 
東京オリンピックの開催に
延期を求める 世界のアスリートたちの訴えは 
一時停止の赤信号を 点滅させる
聞けば聞き腹となるが
男は 確信もなく ただできると吹聴する
頼みにしていた友人は 自国で経済が自爆寸前
オリンピックどころではない
二人に共通しているのは 
嘘で固めた言動が 信じられぬだけのことだった

もりかけも桜の話も オリンピックも 真実を話さぬ限り
ウイルスで逃げおおせるとは ゆめゆめ思うことなかれ
民は 聞き耳を立てて 虚実を聞き分ける
民の聴力を 軽んじ侮(あなど)ることなかれ 

※聞けば聞き腹:聞いたが為に腹立たしくなる。

〔2020年3月22日書き下ろし。頼りの友人も窮地に陥る。ついこの間の完全実施は夢幻となるのだろうか。希望的観測ではない、正しい情報を丁寧に発信することこそ、国民を護る。それが一番苦手なことは誰もが承知しているが、やるしかない〕